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宇宙における高エネルギー、超高温現象を対象とする天文学です。X線は地球の大気に吸収されて地上には届かないので、1960年代にロケット観測でX線天体が初めて発見されました。現在では人工衛星等による宇宙空間からの観測が主流となっています。
日本は、1979年の「はくちょう」衛星以来、「てんま」「ぎんが」「あすか」「すざく」と5機のX線天文衛星を打ち上げ、世界のX線天文学をリードしてきました。6機目として2016年2月に打ち上げられた「ひとみ」は、本格的な観測に入る前に通信が途絶え運用断念となってしまいました。2017年現在、代替機の打ち上げが計画されています。
この展示では、実際のX線天文衛星「あすか」に使われたものと同じX線鏡の実物を展示し、さらにレーザー光線を使った模型で特殊な光の集め方を紹介しています。
X線望遠鏡にはどんな特徴があるのでしょう。
【X線望遠鏡のしくみ】
天体望遠鏡は、天体からの光を集めて焦点面上に天体の画像をつくるための道具です。しかし、X線はレントゲン撮影に使われるように、人体を貫いてしまうほど透過力の強い光です。可視光のように大きな角度で鏡に入射させて、反射させたり光路を大きく変えたりすることはできません。いったいどうすればX線を集めることができるのでしょうか?
実はX線は非常に滑らかな金属鏡面に、鏡面すれすれ(鏡面に対して角度で1度程度)に入射したときのみ、効率よく反射されます。川や湖の水面で石を何度も跳ねさせる遊び「水切り」の石に似ています。この性質を利用してX線を浅い角度で何度も反射させて進行方向を徐々に変えるのです。具体的にはX線望遠鏡の鏡は、図のように円すいを輪切りにした(中心軸に垂直に切った)形をしており、その内側を鏡にし、円すいが細くなる方に反射しながらX線を集めます。
しかし、円すい鏡1枚だけでは入射X線に対する面積が小さく、効率よくX線を集めることができません。そこで、図のように、バウムクーヘンのように鏡を何重にも配置して、より多くのX線を集めています。「すざく」のX線望遠鏡は、半径の違う円すい鏡が120枚、約1mm間隔で重ねられた「多重薄板鏡」です。この多重薄板鏡は、非常に薄いアルミニウムの板に金がコーティングされており、シャープな画像を撮るために、滑らかな鏡面を持つだけではなく、中心軸の向きや鏡同士の間隔が精密に保たれています。その直径は40cm、重量はわずか20kgです。この鏡は、名古屋大学とNASAのゴダード研究所が共同で開発しました。
参考資料
ISASニュース「特集X線天文衛星すざく」(2008)(宇宙航空研究開発機構)
http://www.isas.jaxa.jp/j/special/2008/suzaku/
文 学芸課 天文係