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この展示室外周は北側入口から右回りに、地球から宇宙の果 てまでの天体や事象を並べています。そのスケールは、長さ を10倍ずつ大きくしていくパワーズオブテン(10のべき乗) の考え方に沿っています。 その目盛りや展示パネルなどに出てくる宇宙での長さの単位 や、距離の測り方をまとめました。さらに、太陽系以外の惑 星系や、地球外知的生命探査を紹介しています。
【天体までの距離のあいまいさ】
科学技術が進んだ現在、天体までの距離は測定しつくされたと思うかもしれません。しかし、実はそうではないのです。
恒星までの距離を測るには、地球が太陽の周囲を回ることでできる3億kmの長さを基線とした三角測量で測ります。しかし星までの距離はとても遠いので、測定する角度は、最も近いケンタウルス座のα(アルファ)星でも、1度の3600分の1以下である1”(秒角)より小さくなります。さらに遠い星ではもっと小さくなります。一方、星を観測する際の大気によるゆらぎはその60倍の1’(分角)の桁ですから、観測装置がいくら進化しても、精度良く観測するのはとても難しいのです。
そこで人工衛星によって大気のゆらぎのないところで測定をするようになったのですが、それでも精度良く観測できるのは400光年程度までの距離の星です。400光年というと、肉眼で見える星でもそれより遠いものがたくさんあります。たとえば、夏の大三角を形作る、はくちょう座のデネブまでの距離は1424光年。オリオン座の二つの1等星も、ベテルギウスが497光年、リゲルが863光年となります。そこで三角測量だけではなく、星の温度や色から、星そのものの明るさを類推して、そこから距離を求めるという方法を使わざるを得ません。その結果、本来は誰が測定しても同じであるはずの星までの距離が、使う手法や解釈によって異なるということになってしまうのです。
というわけで、書物ごとに恒星までの距離が違っている場合が多々あります。また、同じ書物でも、数年前と今とで同じ星の距離が変わってしまっている場合があります。さらに見かけの明るさと距離から、その星本来の明るさ(絶対等級)を算出しているので、距離が変わると、絶対等級の値が変わってしまうのです。これは星だけの問題ではありません。有名なアンドロメダ銀河も2010年現在は230万光年と表記されていますが、最近の研究からすると将来もっと大きい値になるでしょう。一方、アンドロメダ銀河の大きさを知るには、見かけの大きさと距離から算出します。そこでもし距離が遠いことになれば、その分、銀河自体の大きさが実は大きかったということになるのです。
宇宙があまりにも広いので、これだけ測定技術が高まった現在でも、天体までの距離やそこから求められる明るさや大きさには、まだまだ曖昧さがあるのです。
参考資料
NASAジェット推進研究所、ボイジャー探査機のサイト
http://voyager.jpl.nasa.gov/
パワーズ オブ テン—宇宙・人間・素粒子をめぐる大きさの旅(1983)フィリス・モリソン 、 フィリップ・モリソン著 村上 陽一郎 、 村上 公子 (翻訳) (日本経済新聞出版社)
文 学芸課 天文係