科学館を利用する > 展示ガイド > 展示フロアマップ > 地球ができたころ 原始地球の石
直接隕石に触っていただき、地球創世期の光景を思い浮かべてもらいたいと思っています。
【原始地球の岩石】
地球に衝突する隕石が減少し、次第に冷えてくると、水蒸気は液体の水となり、雨を降らせました。恐らく何万年も荒れ狂うような豪雨が降り続いたことでしょう。雨は地表を冷やし、気温を下げるため、ますます雨を降らせることになりました。雨水は地表の低いところに溜まり、海になりました。しかし、今と比べればまだまだ熱い地球でした。その証拠がコマチアイトという岩石なのです。コマチアイトをよく見ると、針状結晶が集まっていることがわかります。この結晶はほとんどカンラン石ですが、1650度以上の高温マグマが急激に冷却しないと、このような結晶にはなりません。つまり、この岩石は地球が熱かった証拠と言えるのです。
世界最古の石はカナダのアカスタ片麻石という岩石で、約39億年前のものです。グリーンランドのアミツォーク片麻石も約38億年前で、最古の岩石の1つと言っていいでしょう。変成作用を受けていますが、花崗岩と同じ成分です。花崗岩は大陸をつくる岩石で、当時すでに大陸が形成されていたことの証拠でもあるのです。
【コマチアイト】
コマチアイトはマグマが固まってできた「火山岩」のひとつで、原始地球でできた代表的な岩石のひとつです。その岩石名は、南アフリカのコマチ川に由来します。よく見ると、針あるいは樹枝のような幾何学的模様が見られ、「スピニフェックス組織」と呼ばれます。スピニフェックスというのは乾燥地帯で見られる草の名前です。この組織は、高温のマグマが急激に冷える時に、カンラン石という鉱物の結晶が細長く伸びるように成長してできたと考えられています。ただし、蛇紋石という別の鉱物に変質しています。コマチアイトのマグマは、1650℃以上でなければできません。現在見られる高温の玄武岩マグマでも1200℃くらいが最高でしょう。このマグマを噴出するような火山は現在どこにもありません。コマチアイトは、原始地球が高温だった証拠なのです。
協力
東京工業大学地球史資料館
参考資料
「全地球史はどこまで解明されたか」(1998年)科学68巻10号
46億年地球はなにをしてきたのか(1993年)丸山茂徳(岩波書店)
岩波ジュニア新書 地震・プレート・陸と海(1995年)深尾良夫(岩波書店)
「地球大解剖」(2002年)ニュートン別冊(ニュートンプレス)
文 学芸員 西本昌司