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二酸化炭素の吸収 石灰岩・サンゴ

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展示作品の狙い

 二酸化炭素の濃度が異常に少ない大気は、地球特有の環境です。二酸化炭素は、石になって取り除かれました。石灰岩の形成には生命が関与しており、生命が現在の地球環境を作ったことを教えてくれる石灰岩をシンボリックに展示しました。

知識プラスワン

 地球の両隣の惑星、金星と火星の大気はどちらも二酸化炭素がほとんどです。しかし、このふたつの惑星の間にある地球の大気には二酸化炭素はわずかしかありません。不思議ではありませんか。実は、かつては地球の大気もほとんど二酸化炭素でした。そう、惑星3兄弟だったのです。海ができたころの原始地球の大気はほとんど二酸化炭素ばかり(約96%)だったのに、現在では約0.035%にまで減ってしまったのです。現在の何万倍もあった二酸化炭素はどこに行ってしまったのでしょうか?
 実は、二酸化炭素は石になってしまったのです。それが石灰岩です。現在、地球に存在する石灰岩をすべて二酸化炭素に戻してしまうと、金星と同じような二酸化炭素だらけの分厚い大気になると言われています。つまり、地球の大気に二酸化炭素が非常に少ないのは、そのほとんどが石灰岩になってくれているおかげと言えます。石灰岩は二酸化炭素の貯蔵庫なのです。もし、二酸化炭素が石となって大気から取り除かれなければ、その温室効果で地球はまさに灼熱地獄だったことでしょう。
 石灰岩をよく見てください。中に入っているのは、サンゴやフズリナといった動物の化石です。石灰岩は石灰質の殻を持った動物の遺骸が集まって、長い時間をかけて固くなったものです。生命が作った地球名産の岩石と言えるでしょう。二酸化炭素は水に溶けやすく、水中では炭酸水素イオンとなります。炭酸水素イオンはカルシウムイオンなどと反応して炭酸塩として沈殿します。この反応によって積極的に二酸化炭素を固定してくれたのが、サンゴなどの石灰質の殻を持った生物たちでした。これらの生物は、骨格(殻)をつくるためどんどん二酸化炭素を消費し、ついには、サンゴ礁という言わば巨大な炭酸塩の塊を作ったのです。サンゴ礁はさらに長い時間をかけて石灰岩に変化しました。水中で炭酸塩が沈殿する反応では同時に二酸化炭素も放出されるため、それで大気中の二酸化炭素が簡単に減るわけではありませんが、一度石になってしまえば簡単に大気に戻ることもできません。つまり、何億年という気の遠くなるような時間をかけ石灰岩という固い岩石になることではじめて、大気から二酸化炭素は取り除かれたのです。

 


【 参考資料 】

参考資料
全地球史はどこまで解明されたか 科学68巻10号(1998年)岩波書店
地球温暖化の真実(1999年)住 明正(ウエツジ)
文 学芸員 西本昌司

 

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