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地球で過去に起きた現象を知るにはどうすれば良いのでしょうか。どのような石が何の手がかりとなるのか紹介し、地球のおいたちを解き明かしていく地球科学を知っていただく展示です。
【地球誕生を知る手がかり:隕石】 地球誕生の頃にできた岩石は、地球に残っていません。宇宙には残っていますが、採りに行くのは容易ではありません。そこで、手がかりとなるのが宇宙からやってきた隕石です。隕石の約86%は、コンドルールと呼ばれる丸い粒を含む「コンドライト」。「はやぶさ」の探査で、微惑星「イトカワ」もコンドライトでできていることが確認できています。 ※理工館6階の展示ガイド「地圏~地球の材料」も合わせてご覧ください。
【化石のでき方を知る手がかり〜コンクリーション(ノジュール)】 地層の中から球状の塊(コンクリーション)が出てくることがあります。展示されているのは、ツノガイ貝殻の口のまわりにできたコンクリーション。詳しい研究の結果、軟体部の腐敗でできた二酸化炭素と海水中のカルシウムが結びつき、数週間〜数ヶ月以内という速さで炭酸カルシウムが沈殿して固まったことがわかりました。化石ができるのは、意外と速いのかもしれません。<写真:コンクリーション産出状況(写真:名古屋大学博物館)>
【マントルを知る手がかり:カンラン岩ノジュール】
玄武岩の中に、緑色の鉱物のかたまり「カンラン岩ノジュール」が含まれていることがあります。これは、マグマによって地下深部から地表に運ばれてきた上部マントルの岩石だと考えられており、いまだ人類が到達できていないマントルがどのような物質でできているのかを推測する手がかりとなっています。 <写真:アメリカ・アリゾナ州のカンラン岩ノジュールの露頭(撮影:西本昌司)>
【海底火山を知る手がかり:枕状溶岩】 海の中に流れ出した溶岩流の表面は、水で急冷されて固い殻ができます。しかし、中は融けたままで、後ろから流れてくる溶岩に押されると、殻を破って流れだします。それがまた海水によって急冷されて新しい殻をつくります。この繰り返しによりできた溶岩は、まるで枕を重ねたように見えることから「枕状溶岩」と呼ばれます。枕状溶岩は、そこが海底であった証拠なのです。<写真:ハワイ海底に見られる枕状溶岩 (NOAA)>
【地震活動を知る手がかり:断層岩】 断層が動くときには破砕や再結晶などで岩石が変形します。これが「断層岩」。断層が動くときの揺れが地震ですから、断層岩は「地震の化石」と呼ばれることもあります。高温高圧の地下深部では、岩盤は単に割れるわけではなく、変形とともに再結晶して細粒の岩石になったり(マイロナイト)、摩擦熱によって岩石が融けて再び固まったり(シュードタキライト)していることが、断層岩から知ることができます。 【地下環境を知る手がかり:鉱物】 どんな鉱物ができるかは、温度・圧力・元素分布などの環境条件によって変わります。たとえば、ダイヤモンドは地下100kmより深いところでしかできません。岩塩は水が蒸発しやすい環境でしかできません。ですから、鉱物の種類を知ることは、その鉱物ができたときの地下環境を知る手がかりとなります。同じ鉱物でも、微量成分の量や結晶の形の違いから環境条件を推測することができます。
酒巻秀彰, 島田耕史, 高木秀雄(2006) シュードタキライトの選択的生成場−足助剪断帯の例. 地質学雑誌 112, pp 519-530.西本昌司(2015) 地球のはじまりからダイジェスト 合同出版.
文 学芸員 西本昌司