科学館を利用する > 展示ガイド > 展示フロアマップ > からだのふしぎ
体中での変化は考えなくてもずっと続き、一人のヒトのからだはふしぎさに満ちていることを映像とナレーションで紹介します。
周囲に展示されているいろいろな人体臓器の模型などや解説で、さまざまな役割にあわせ働くしくみを知ることができます。
※1989年の名古屋市科学館「生命館」開館のときに設置された模型などを再利用し、消化管、肝臓、中枢神経系、歯を展示しています。
[旧展示との違い]展示背面の人体を表す図と各部の名称のプレートを作り直しています。
関係する内容は、ゾーン「つたえる・かんがえる・ちょうせつする」や、「とりこむ・すてる」の他の展示品や解説でも紹介しています。
【からだの中のバランスをとるホメオスタシス(恒常性の維持)】
映像では、私たちが何も考えなくても、体のいろいろな部分が互いに関係してうまくはたらき、「いつも同じような状態を保つしくみ」を紹介しています。このしくみを「ホメオスタシス」(恒常性)といいます。 からだの中や外の状態が変化したことを感覚神経が中枢神経系(脳や脊髄)に伝え(1)自律神経系(2)内分泌系 の2つのしくみが互いにはたらきかけあって、私たちのからだをちょうどよい状態に保ってくれます。
例えば、暑い時に体温が上がりすぎないようにするときのしくみは、次のようなものです。熱を発生させないため筋肉や肝臓で物質の分解を減らし、血管を拡張させて皮膚からの熱放出を高めます。汗を出し、蒸発する時に皮膚の表面から熱を奪う(気化熱)ことでも、体温が上がりすぎないようにしています。
【消化管では、食べ物はどう変わるの?】
口から取り入れた食べ物は、次のような順で私たちのからだに取り入れられます。
長くつながった消化管のほか、すい臓・肝臓・胆のうといった消化器官も消化液を出して食べ物から養分を取り出しています。
(1) 口腔:食べ物はかみくだかれ、そのうちデンプンがある程度消化されて、食道に送られる。※1
(2) 食道:食べ物を少しずつ胃へと送られる。
(3) 胃:アルコールや炭酸、ある種の薬などが吸収され、タンパク質が分解される。
胃はカタカナの「ノ」の字のような向き※2で、腸へ少しずつ食べ物を送る。
(4) 小腸:すい液、腸液(小腸の壁の消化酵素)でタンパク質、デンプンの他に脂肪も分解され、吸収されてまわりの毛細血管(脂肪はリンパ管)で運ばれる。
(5) 大腸:ひらがなの「の」の字のようにぐるりとおなかの中をまわっていて、水分を吸収する。
※1 このとき、気管や鼻にものが入らないように「ふた」が動く。
※2 人によっていろいろなかたむきやカーブをしている。
【肝臓と胆のう】
模型では、人体内で最大級の臓器「肝臓」の存在感や、脂肪の消化吸収に重要な消化液・胆汁をためておく袋「胆のう」を見ることができます。
「肝臓の微細構造」では、基本的な単位である「肝小葉(かんしょうよう)」(直径1ミリ、高さ2ミリくらいの多角形の柱状のかたまりになった中心を血管が通っている構造)を表しています。よく見ると、肝臓の細胞に消化管からの血液を運ぶ「門脈」(※4)(A)と、肝臓自身に酸素を多く含んだ血液を運ぶ「肝動脈」(B)からそれぞれ分かれた細い血管(D、E)、肝臓から出ていく血管「肝静脈」へつながる細い血管(C)、胆のうへ胆汁を集める「胆管」につながる管(F)、肝臓の細胞(G)など、複雑な構造もわかります。
【肝臓は化学工場なの?】
肝臓ではたくさんの化学反応が行われ「化学工場」に例えられます。主なはたらを3つ紹介します。
(1)貯蔵・合成・分解
・ブドウ糖からグリコーゲンを合成(作り出すこと)する。※1
・多くのタンパク質の合成や分解も行う。
(2)解毒
・人体に害になる物質の無毒化
例:アルコールを分解し最終的に酢酸に変える ※2、アンモニアを尿素に変える。
(3)胆汁(脂肪の消化吸収に重要な消化液)を作る。※3
※1 血液中のブドウ糖の濃度が低下するとグリコーゲンは分解されてブドウ糖になる。
※2 途中で毒性の強いアセトアルデヒドができる。
※3 胆汁は胆のうにためられる。
※4 両端に毛細血管をもつ血管を門脈と呼ぶ。肝臓のものは代表的で「肝門脈」ともいう。
【中枢神経系】
からだの外や中のようすを知り、そして対応するためのしくみ、それが体中にはりめぐらされた神経細胞(ニューロンともいいます)という特殊な細胞を中心とした「神経系」です。
ニューロンの数が多くなって、複雑で大きな神経系になると、送られる情報も膨大になります。情報を集中させ、適切に伝える司令塔のしくみを「中枢神経系」といいます。
背骨のある脊椎動物では中枢神経系が背中にそった太いすじ状に発達していますが、これを「脊髄」といいます。
脊髄の頭の部分はふくらんで、脳という特に発達した器官になり、大脳・中脳・小脳・間脳にわけられます。
脳と脊髄の間には延随(えんずい)というふくらみがあり、ここは呼吸や反射の中枢としてはたらいています。
この模型では、ヒトの神経系のまとめ役をする「中枢(ちゅうすう)神経系」の全体のようすを見ることができます。ヒトの大脳は他の脳をおおってしまうほど大きくなっていて、小脳と延髄の一部以外は外からは見ることができないことがよくわかります。
【口と歯は食べ物のためだけ?】
口腔(こうくう)とはくちびる、ほお、あごなどがまとまり、後方はのどにつながっている部分で空気と食物の入り口です。舌で味覚を感じ、歯でものをかみくだき、のみこみ、左右のほおがあることで「ほおばる」ことができ、発音するなど日常生活と深く関わっています。
気道の中の声帯がふるえて声を出すとき、いろいろな響きや音の成分を加えてことばや声をつくるのも口腔の大事な働きです※。
※発音には鼻の中や頭の骨も関係している。
Newton別冊 体の科学知識 体質編 (2018年) ニュートンプレス
人体のふしぎな話 365 (2014年) 坂井建雄 (ナツメ社)
改訂版 フォトサイエンス生物図録 (2007年) 数研出版
実物大人体図鑑3内臓 (2010年) 坂井建雄 (大日本印刷)
Newton別冊 人体図(2015年)ニュートンプレス
解剖生理を面白く学ぶ(2008年)増田敦子(医学芸術社)
からだの不思議 だれでもわかる解剖生理学 (2000年)坂井建雄(メヂカルフレンド社)
新版 たのしい理科 4年(2015年)有馬朗人ほか(大日本図書)
新版 たのしい理科 5年(2015年)有馬朗人ほか (大日本図書)
新版 たのしい理科 6年(2015年)有馬朗人ほか (大日本図書)
理科の世界2(2015年)有馬朗人ほか(大日本図書)
シリーズ消化の旅(2016年) NEWTON
シリーズ感覚のふしぎ(2015年) NEWTON
シリーズ脳とニューロン(2016年) NEWTON
驚異の小宇宙・人体 3消化吸収の妙-胃・腸-(1989年)、4壮大な化学工場-肝臓-(1989年) NHK取材班(日本放送出版協会)
驚異の小宇宙・人体 別巻2ビジュアル 人体データブック(1990年) NHK取材班 (日本放送出版協会)
たんけん!人のからだ 1 手や足はなぜ自由に動く(1999年)坂井建雄(岩波書店)
たんけん!人のからだ 5 うんこ・おしっこ・息と汗(1999年)坂井建雄 (岩波書店)
厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト アルコールの吸収と分解 (厚生労働省)
プロが教える脳のすべてがわかる本(2011年)岩田誠:監修 (ナツメ社)
マンガでわかる 人体のしくみ(2012年)坂井 建雄 (監修), 沢田 麻間 (画), サイドランチ (画) (池田書店)
NEWTON別冊 感覚-驚異のしくみ (2016年)(ニュートンプレス)
図解でよくわかる歯のきほん : 歯のしくみから病気、予防や治療、美容、健康、歯科業界まで(2020年)柿本和俊, 隈部俊二, 神光一郎, 中塚美智子, 三上豊 著(誠文堂新光社)
絵ときブレインサイエンス入門(1987年)小林繁ほか(オーム社)
解剖学アトラス(1984年)越智淳三(文光堂)
生物学辞典第3版(1983年)(岩波書店)
驚異の小宇宙・人体II 脳と心 1 心が生まれた惑星(1993年)、2 脳が世界をつくる(1993年)、別巻 ビジュアル 脳と心のデータブック(1994年)NHK取材班(日本放送協会)
女の子のからだとこころの本(2)すこやかなこころをつくる(1994年)大島清(偕成社)
ドクター・トミーのからだの本(10)のうと心のひみつ(1994年)須田都三男(小峰書店)
ドクター・トミーのからだの本(1)うんこはなんでも知っている(1993年)須田都三男(小峰書店)
Newton別冊 からだのサイエンス(1996年)(教育社)
入門ビジュアルサイエンス 人体のしくみ(1994年)坂井建雄(日本実業出版社)
imidas1991別冊付録 人体アトラス(集英社)
大自然のふしぎ 人体の図詳図鑑(1994年)(学習研究社)
からだがわかる本(1993年)福生吉裕(法研)
女の子のからだとこころの本(1)美しいからだをつくる(1994年)大島清(偕成社)
すばらしい人間のからだ 10 私は神経組織です、12 私たちは内分泌腺です(1988年)ズイッリ(リブリオ出版)
文:学芸員 堀内智子