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ヒトの一生で起こるからだの変化を段階ごとに紹介します。壁面の大きな9つの人物イラスト(各段階の姿)に添えて、新生児から思春期までの大きな変化やおとなになってからの変化などを解説しています。 一生を6つの時期(ライフステージ)に分けていますが、思春期は男女別とし、乳幼児期は乳児・幼児に新生児期の2つの解説を加えているため全部で10の解説があります。
【新生児期・乳児期】
おなかの中から出てきて、外界で生活していくための赤ちゃんの時期です。
生まれてから28日目までの赤ちゃんを特に新生児といいます。この時期は、もっと後になると見られなくなる「反射」(生まれつき備わった無意識に起こる行動)が見られます(原始反射)。新生児期の赤ちゃんは1日のうち多くは寝ていますが、1日のリズムができておらず、まとまって眠るようになるのはもっとあとになってからです。睡眠・授乳・排せつ が繰り返される時期です。乳児期は新生児を過ぎて1歳ごろまでの時期です。
ただ小さいだけではなく、体温の維持や体を清潔にする、必要な食べ物をとることにもおとなの助けが必要です。成長の早さは一生の間でも大きく、生まれたときにくらべ生後1年では体重が3倍、身長が1.5倍くらいにもなります。
【幼児期・少年少女期】
赤ちゃんではなくなりましたが、からだのはたらきはおとなとはずいぶん違います。「こどもは小さいおとなではない」という言い方があるくらいです。
成長スピードも、赤ちゃんほど速くはありませんが、身長、体重以外にも、いろいろな臓器の発育がみられます。また、乳歯が永久歯にはえかわり始めます。
【児童期】
小学生の時期です。周囲の人との関わりと学びによって知識や技能、社会性や考える力もついてきます。後半が思春期と重なる人もいます。高学年になって体が大きくなっても、まだ、はたらきはおとなとは違います。
【二次性徴と思春期】
10歳代前半に、こどもからおとなへ変わる時期です。新生児・乳児期についでからだが大きくなる時期でもあります。この時期のからだの大きな変化は、「二次性徴」ともいいます。
赤ちゃんから小学校低学年くらいまでのこどものからだは、外から見てあまり男女の違いはありません。男の子には「おちんちん」があり、女の子にはない、ということが目立つくらいですから、パンツをはいていたら男か女か簡単にはわかりにくいです。
ところが、もう少し大きくなって10歳代前半になると、短期間で急にからだの他の部分もおとなっぽく変化する「二次性徴(にじせいちょう)」のみられる時期「思春期(ししゅんき)」があります。
身長・胸囲・体重など、からだが大きくなると同時に、女の子は皮下脂肪がつきふっくらとしてからだが丸みをおび、骨盤(腰の骨)が発達、乳房がふくらんできます。男の子は肩幅が広くなり、筋肉が急に発達してがっしりとし、のどぼとけの発達、声変わりもおきます。 また、からだのきまった部分に毛が生えてきます(わき、生殖器付近、男の子では脚の毛やひげもこくなります。にきびができる人も出てきます。
このからだの急激な変化のはじまる年齢は女の子の方が、男の子よりも1から2年下ですので、女の子が同級生の男の子より背が高いということがおこります。からだのどの部分が大きくなるかは時期にずれがあるため、太ったりやせたり、からだつきが様々に変化してみえる時期でもあります。
からだつきだけでなく、ホルモンなど、内部のはたらきもめざましい変化をとげます。
女の子では最初の月経である「初経(しょけい:初潮〔しょちょう〕ともいいます)」が、男の子では最初の射精である「精通」がみられます。次の世代を作れるからだになっていくわけです。
また、ものの感じ方や考え方など、精神や心のはたらきも大きく変わる時期でもあります。
【青年期】
ものの感じ方や考え方など、精神や心のはたらきが大きく変わって体もおとなになり、次の世代を育てることができる年齢(生殖年齢)になります。からだの機能は最も充実し、いろいろな部分のはたらきも高まります。
【中年期】
青年期に続いて、こどもを育てる時期ですが、より社会的な責任が重くなってきます。
からだの機能は青年期ほど高くないものが出てきます。また、男女共に「更年期(こうねんき)」とよばれるホルモンの変化がおこりますが、女性の方が月経の終了である「閉経(へいけい)」にともない、急激な変化が起こるため体調をくずす場合もあります。
【老年期】
生殖年齢ではなくなりますが、よりよく生きるための時間ができる人も多いでしょう。病気をもつ人も多くなり、病気とうまくつきあい、共存する生活が一般的です。
運動や視力、呼吸機能などが低下しますが、一部の消化器や問題解決の能力は衰えず性格もあまり変わらない人もいます。変化のしかたや時期は個人差があります。
また、血液中の成分のうちいくつかや、知能は年をとってもあまりかわらないというデータもあります。
現代の日本人では元気で長生きをした人が数多く、世界で最も平均寿命の長い国の一つです。また、平均寿命は女性の方が長く、男性とくらべて数年は長生きです。
Newton別冊 体の科学知識 体質編 (2018年) ニュートンプレス
Newtonライト 筋肉のきほん (2019年) ニュートンプレス
人体のふしぎな話 365 (2014年) 坂井建雄 (ナツメ社)
改訂版 フォトサイエンス生物図録 (2007年) 数研出版
実物大人体図鑑 1筋肉 (2010年) 坂井建雄 (大日本印刷)
実物大人体図鑑3内臓 (2010年) 坂井建雄 (大日本印刷)
子どもの発達段階ごとの特徴と重視すべき課題(2009年)https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/053/gaiyou/attach/1286156.htm 文部科学省
子どもの保健 1 子どもの健康と安全を守るために (2013年)遠藤 郁夫 (編集),曽根 眞理枝 (編集),三宅 捷太 (編集),稲坂 惠 (ほか執筆) 学建書院
成人発達心理学 (放送大学大学院教材) (2017年)星 薫(放送大学教育振興会)
成人発達とエイジングの心理学 (2018年)西村純一(ナカニシヤ出版)
図解でよくわかる歯のきほん : 歯のしくみから病気、予防や治療、美容、健康、歯科業界まで(2020年)柿本和俊, 隈部俊二, 神光一郎, 中塚美智子, 三上豊 著(誠文堂新光社)
レナルト・ニルソンの世界 誕生の神秘(1992年)ラーシュ・ハンベルイェル(小学館)
生命誕生の神秘 Newton 1997.3 12-41
日本人のからだ(1996年)鈴木隆雄(朝倉書店)
驚異の小宇宙・人体 III 4 命を刻む時計の秘密(1999年)NHK「人体」プロジェクト(日本放送出版協会)
入門ビジュアルサイエンス 人体のしくみ(1994年)坂井建雄(日本実業出版社)
語ろうよ こころ・からだ・いのち 2 男の子のからだ(1989年)北沢杏子(岩崎書店)
からだの科学 増刊 女性の病気(1994年)雨森良彦(日本評論社)
ドクター・トミーのからだの本(9)みんなおとなになるんだね(1994年)須田都三男(小峰書店)
骨粗しょう症 防ぎ方・治し方(1996年)石突正文(家の光協会)
遺伝 別冊 老化と寿命(1995年)(裳華房)
性とからだの本1から6(1993年)大島清ほか(僧成社)
特別企画「更年期」 武谷雄二 からだの科学204p.18-74(1999年)
文:学芸員 堀内智子