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生物の基本単位である細胞とヒトの細胞が持っている遺伝子について学ぶ展示です。いろいろな細胞を観察したり、細胞が動いている動画を通して、教科書にある細胞の模式図をこえて、ダイナミックに活動している細胞のイメージを感じてください。また、幹細胞やiPS細胞を理解する基礎知識として、細胞周期もとり上げました。ヒトの遺伝子の数は,2万から3万と推定されていますが、実際どの染色体にどんな遺伝子があるのか、ヒトの代表的な遺伝子について、検索できる『遺伝子なび』のコーナーもあります。
ここでは、「遺伝子なび」で扱っている染色体と遺伝子について説明します。 私たち人間の体は、およそ60兆個の細胞からできていると言われています。その細胞1つ1つに、核があって、その人一人を作るための遺伝情報の全部がその1つ1つの細胞の核に入っています。核はいつもは丸い形をしていますが、細胞分裂するときには、遺伝情報を正確に二つの細胞に分配するために、丸い形が消え、棒状の「染色体」という形になって分かれていきます。この染色体は、ヒトの場合、長いのものから順に1から22番と名付けられた22本の常染色体と、XYと呼ばれる性染色体があります。男性は常染色体22本を2セットと,性染色体XとYの46本、女性は、常染色体2セットと性染色体X2本の46本持っています。2セットと書きましたが、1セットは母親から卵子として、もう1セットは父親から精子としてもらうものです。(卵子と精子は特別な細胞で、染色体を1セットずつしか持っていません。)それらが結合して受精卵になり、遺伝情報をコピーしながら、細胞分裂を繰り返して成長していくわけです。
では、同じ父母から生まれた兄弟姉妹はまったく同じ染色体を持つことになるの?と思われるかもしれません。実は,ここに面白い仕組みがあります。まず、卵子や精子の細胞を作る時の細胞分裂を「減数分裂」といいい、通常の「体細胞分裂」とはちがった分裂をします。父母から1セットの染色体をもらいますが、その1セットの内容、染色体の組合わせが問題です。23本が全部いっしょに動く訳ではないのです。1本1本の染色体は、元をたどれば親の親、つまりおじいさん、おばあさんからからもらったものですね。23本の組み合わせを考えていくと、なんと2の23乗で,約840万通りもあります。さらに減数分裂時には、おなじ番号の染色体どうしが接触して混じり合う(組み換え)という現象が起こります。つまり1本の染色体の中で、おじいさんとおばあさんからもらった部分が混じって、新しい組み合わせの染色体ができて、子どもへと伝わるのです。そこで、遺伝子の組み合わせは無限といってよく、同じ両親から産まれた兄弟姉妹でも、一人一人ちがっていて、歌の歌詞にあるように「オンリーワン」なのです。
さて、2万から3万あるといわれている遺伝子は、この22本の常染色体とX・Yの性染色体上に決まった居場所を持っています。その遺伝子の所番地の表し方は、世界共通です。染色体をある染色方法で染めると、いつも同じしま模様が染まってきます。この模様やくびれの部分(セントロメア)を手がかりに、所番地が決められています。そこで、ある遺伝子が何番染色体のどこにあるかを表すことができます。
参考資料:
ヒトゲノムマップ(2008)文部科学省
ヒトゲノムマップ(2008)加納圭(京都大学学術出版会)
遺伝子地図帳(1998)田辺功・山内豊明(西村書店)
文 学芸員 尾坂知江子