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地表の水は蒸発して水蒸気となり、上昇し上空で雲をつくります。雲はやがて雨(水)となって地上にもどってきます。水は地球上で循環しているのです。「水のひろば」はこの大きな水の循環と水の性質について、さまざまな実験を通して知識を深めていただくためのものです。
ここでは「あめのステージ」にある2つの展示を解説します。
<あまつぶのかたち>
空から降ってくる雨粒はどのような形をしているのでしょうか。球もしくは涙のような先が丸く、後方に糸を引くような流線形を思い浮かべるのですが、実はそうではありません。
雨粒が空気中を落下するとき、空気の抵抗を受けます。この抵抗は、雨粒が大きいほど無視できない大きさになります。その結果、雨粒が小さい場合は球の形になるのですが、雨粒が大きいときは、空気の抵抗を強く受ける下の面がやや平らになり、下が平らになった球の形になっています。
涙滴と思われていたのは、木の葉の先から露が落ちるときや、窓ガラスを伝う水滴が涙形をしているためです。1951年に北海道大学の孫野長治(まごのちょうじ)が空中を落下する雨粒の写真撮影に成功し、「まんじゅう形」を世界で初めて確認したとされています。
この実験装置は、下から強い風を起こし、水滴の落下を遅らせ、そのときの水滴の形を観察しようとするものです。
<ころがるすいてき>
この展示品は、しみ込むことなく、ころころと水滴がころがっていく不思議な実験を示しています。
もともと水滴は球形になろうとする性質を持っています。水と水の分子どうしが分子間力で引き合い小さくなろうとする性質があります。結果として、水の表面では、表面積を小さくしようとする力になってあらわれます。この力のことを表面張力と呼んでいます。
ところが、たとえば雨粒が衣服についたりすると、雨粒は球形を保てず、衣服の生地にしみ込み、図のような形になるはずです。そこで、水滴と接する物資の表面を加工し、水をはじくような工夫をします。これが撥水加工です。ズボンのすそや傘にスプレーすると水をはじきやすくするフッ素系の薬品が開発されていますが、より撥水の性質を高める超撥水の技術が開発されています。図に示した接触角が150°以上を超撥水と呼んでいます。
協力
名古屋大学大学院 高井治(たかいおさむ)教授
竹田印刷株式会社
(以上、ころがるすいてき)
参考資料
超撥水と超親水(2009)辻井薫(米田出版)
著者 学芸員 馬渕浩一