科学館を利用する > 展示ガイド > 展示フロアマップ > ジャンボしゃぼんまく・りったいしゃぼんまく
地表の水は蒸発して水蒸気となり、上昇し上空で雲をつくります。雲はやがて雨(水)となって地上にもどり、海に注ぎます。水は地球上で循環しているのです。「水のひろば」はこの大きな水の循環と水の性質について、さまざまな実験を通して知識を深めていただくためのものです。
ここでは「うみのステージ」の2つの展示を解説します。しゃぼん膜としゃぼん玉の性質について調べます。
<ジャンボしゃぼんまく> 非常に大きなしゃぼんまくを作ることのできる装置です。普通のせっけん水ではここまで大きなしゃぼんまくを作ることができません。重力の影響でしゃぼん液が上方から下方にたれ、そこからしゃぼんまくが破れはじけてしまいます。大きなまくを作るためには、下方にたれにくくなるよう液に粘り気をもたせることが必要です。この展示品では、糖質など液に粘り気を与える添加物を入れた特殊なしゃぼん液を使用しています。
透明なはずのしゃぼんまくに色がついていることに気がつくはずです。色がついているように見えるのは、光の干渉によるものです。
光の干渉とは何か説明しましょう。光がしゃぼんまくにあたったとき、2つの反射がおきます。1つは液の表面での反射。もうひとつは、液を通過し裏側の表面で反射し、まくの中を往復してきたものです。(図1)
光には波の性質があります。波には山と谷があり、波の山と山、谷と谷が重なると強い波になります。反対に、山と谷が重なると打ち消しあって波が消えてしまうこともあります。これが光の干渉です。
しゃぼんまくの表面で反射した波と裏側の表面で反射した波の2つが干渉します。光の波長(色と考えてください)、しゃぼんまくの厚さ、光のあたる角度、これらの条件によってさまざまな干渉がおき、その結果、さまざまな色が膜の表面についたように見えるのです。さらに、しゃぼん液が下方にたれていくことで、まくの厚みが刻々と変化します。色が動いているように見えるのはこのためです。
<りったいしゃぼんまく> 針金で作った立方体や正四面体の枠をしゃぼん液につけ、引き上げてみると、ふしぎな形のシャボンまくができます。これを実験することができるよう工夫されています。
立方体(サイコロと同じ)のかたちをした枠でしゃぼんまくをつくってみましょう。ふつうに考えると、立方体の6つの面それぞれにまくができるように思えます。しかし、実際には13のまくができます。立方体の12本の辺から中心に向かって12面のまくが内側に引っ張られるようにでき、さらに中央に正方形の13番目のまくをつくっています。(図2(1))
次に、正四面体(三角の面が4つの立体)の場合、中心の1点から4つの頂点のうちの2つの頂点に向かって伸びていくようにまくができています。(図2(2))
2つの実験結果をよく観察してみると、しゃぼんまくの面と面が交わっているところでは、3つの面で交わっています。他の立体で確かめても4つ以上になることはありません。そして、交わる角度は120°になっています。
なぜこのような結果になるのか、これを理解するには表面張力を知らなければなりません。分子と分子の間には分子間力という力がはたらき、お互いに四方八方に引き合っています。この力は、しゃぼんまくの表面には面積を小さくしようとする力、すなわち表面張力となってあらわれてきます。すべての枠にしゃぼんまくが接しながら、面積を最小にしようとするとこのようなかたちになるのです。
しゃぼん玉は球です。同じ体積で最小の表面積をもつ立体は球でしたよね。やはり表面張力がはたらいているのです
参考資料
シャボン玉の中は夢のくに(1983)佐藤早苗(大日本図書)
文 学芸員 馬渕浩一