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日本はエネルギーと食糧の多くを海外からの輸入に頼っています。たくさんの原油や食料を運び、また自動車などを製造して海外に輸出する際に大型船が活躍しています。大型船が海に浮き、海上を進むための原理を知っていただくとともに、どのようにして製造されるのかについて理解を深めていただくことがこの展示品の目的です。
<浮力>
物体を水の中に静かに入れると、その物体がおしのけた水の重さに相当する力が上向きにはたらくようになります。この力を浮力といい、このことを「アルキメデスの原理」と呼んでいます。王冠が真に純金でできているかどうか調べてみよ、と命じられたアルキメデスが入浴しているときに発見したという逸話が残されています。
船の重力がもし浮力よりも大きければ、船は沈んでしまいます。船の重力と浮力が釣り合って、海に浮いているのです。
<船を前進させる力>
船を前進させる力は、ディーゼルエンジンです。エンジンによってプロペラを回転させ、プロペラ前方の海水がプロペラ後方に押し出され、その反作用で船が前進します。
<船の設計はコンピュータ>
大型船の設計はコンピュータの力を借りて行います。3次元で部品を設計し、そのデータを基に工作機械が鋼板を切断していきます。
<強い鉄:鋼板>
鉄に含まれる炭素の量を調節して鋼がつくられます。溶けた鋼板の表面に冷たい空気を吹き付けて急速に冷やすと、表面には小さくなろうとする力がはたらきます。冷えた後、大きな力で曲げようとしても力が相殺されて割れたりしません。こうして作られた高張力鋼という鋼板が使われています。
<ブロック工法>
船体は、まず工場でたくさんの鋼材を溶接してひとかたまりのブロックをつくり、それを次々に接合していきます。最後の組み立てはドックで行います。この工法はブロック工法と呼ばれ、短時間に効率的に船を製造するためのものです。
<鋼板と鋼板をつなぐ技術:溶接>
鋼板と鋼板を接合するために溶接を行います。平面と平面を接合するばかりではありません。複雑な曲面どうしを接合するためには、経験を積み重ねた「匠の技」が必要です。
<プロペラの製造>
エネルギー効率に大きな影響を与えるプロペラ。プロペラは機械で加工できない部分が少なくなく、手作業による加工も行われています。形状、表面の加工精度は、燃料の消費量に大きな影響を与えます。
協力
株式会社新来島豊橋造船
ナカシマプロペラ株式会社
参考資料
造船技術と生産システム(2009)奥本泰久(成山堂書店)
船の歴史文科図鑑(2007)ブライアン・レイヴァリ(悠書館)
図解入門・金属の基本と仕組み(2006)田中和明(秀和システム)
文 学芸員 馬渕浩一