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てこは、固い棒状のもので、大きなものを少ない力で動かすことができます。てこを使わなければ、大きな機械を使うことになる場合もあり、簡単な原理でありながら大事な役割を果たしているものと考えられます。
てこの原理について知識を深めていただくことがこの展示品の目的です。
<てこの原理>
てこの原理を説明するために、まず、支点、力点、作用点の3つの定義をしておきます。支点、力点、作用点は、それぞれ、てこを支える点、人が力を加える点、おもりが力を加える点のことです(図1)。
ここで支点の位置を中央より作用点よりにおくと、おもりの重さよりも小さな力でおもりを上げることができます。反対に支点を中央より力点に近づけると、おもりの重さよりも大きな力をかけないとおもりが上がりません。
このとき、支点を中心にしたモーメントが左右で一定に保たれているというルールがあることをぜひ理解してください。つまり、
(おもりの重さ)×(支点から作用点の長さ)
=(加えた力)×(支点から力点の長さ)
が成立しています。単に、軽くなった、重くなったというだけではなく、現象の裏側に潜む法則を理解してほしいと思います。
<てこの種類>
てこには、支点、力点、作用点の位置によって、いろいろな種類があります。原理説明で示したものは、第1種てこと呼んでいます。これ以外に、第2種、第3種のてこがあります。身の回りのてこの応用例とともに、紹介しましょう(図2)。
・第1種てこ
作用点と力点の間に支点をおくてこです。くぎ抜き、はさみなどがこの第1種てこに分類されます。
・第2種てこ
支点を端におき、作用点と力点が同じ側にあるてこです。作用点の方を支点に近づければ、大きな力を取り出すことができます。栓抜き、穴あけパンチなどがこの第2種てこに分類されます。
・第3種てこ
第1種、第2種てこは、ともに大きな力をえるための工夫といってもよいでしょう。ところが、力は小さくなるがおおきな動きを取り出したいという場面もあるかもしれません。これに対応したのが第3種てこです。
第3種てこは、支点を端にして、作用点と力点を同じ側におきますが、力点を支点に近い位置におきます。第2種てこの変形と考えることもできましょう。このとき、作用点に大きな力をかけねばなりませんが、力点では(小さな力ですが)大きな動きに変わります。はし、ピンセット、和はさみなどは第3種てこに分類されます。
第1種、第2種、第3種てこのいずれもモーメントが一定に保たれていることはいうまでもありません。
参考資料
中学スーパー理科事典(2006)石井忠浩(受験研究社)
文 学芸員 馬渕浩一