科学館を利用する > 展示ガイド > 展示フロアマップ > ベルトプーリー
動力をつたえる機構のひとつにプーリーがあります。簡単に動力を伝えることができるため、広く用いられています。プーリーの原理と応用について理解を深めていただくことがこの展示品の目的です。
ハンドルを回すと、ベルトを介して多くのプーリーが連動します。プーリー径の大きさ、ベルトのかけ方によって動き方がかわることが示されています。
<大きなプーリーと小さなプーリー>
大きなプーリーと小さなプーリーをベルトでつないだとき、小さなプーリーの回転にくらべ、大きなプーリーの回転はゆるやかです。一定時間に動いたベルトの長さがどこでも同じであると考えればわかりやすいかもしれません(図1)。
<ベルトのかけかた>
ふつうのベルトのかけかたでは、プーリーの回転方向は同じです。逆回転にしたいときは、たすきがけにします。どのような力を加え、どのような力を取り出したいのか、判断してベルトのかけかたを決めるのです(図1)。
<歯車とプーリー、どっちを使う?>
動力を伝えるしくみとして歯車がよく知られています。歴史的には、プーリーの方がよく動力伝達のパーツとして選択されてきました。
その理由として、歯車の製造には高い精度が求められたことがあるでしょう。1枚の歯車のすべての部分でピッチ、すなわち山と山の間隔が一致していなければなりません。そうでないと、歯車と歯車が回転しなくなってしまうことがあります。高い工作精度をもつ工作機械が確立するまでは、プーリーが主役だったと考えてよいでしょう。
電気が機械の動力源となったのは、ごく最近のことです。日本が明治維新を迎えたばかりの1871(明治4)年、工学寮という工業大学が誕生しました。これは後に東京大学工学部になっていくのですが、世界最先端の工業大学として計画されたこの機関に、電気工学科はありませんでした。当時、電気とは電信のこと。照明や動力源となるような電気の研究は19世紀後半になって始まったのでした。
当時の繊維、機械工場の動力は、水車や蒸気機関によるものでした。工場の外に置かれた水車や蒸気機関を使って大きな回転力を得、その回転で工場内の天井にはわせた大きなシャフトを回転させます。そのシャフトにはいくつものプーリーが固定されており、そのプーリーの真下にある機械のプーリーに回転を伝えたのでした(図2)。
また、プーリーには、中間に介在させることなく、遠くに動力を伝えることが可能であることも特長の一つとして知っておくべきでしょう。
参考資料
絵とき機械要素基礎のきそ(2006)門田和雄(日刊工業新聞社)
文 学芸員 馬渕浩一