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波の性質を影絵で観察してもらう装置です。波の広がり方や、波と波が重なる現象がどのようなものであるのかを知ることができます。
【波の回折】
横にした棒で水面を叩いて波を発生させます。発生する波は棒と平行な直線です。そして、棒から遠ざかるように水面を進んでいきます。波の行く手に壁を設け、壁の1カ所に穴を開けておきます。ほとんどの波は壁で止まってしまいます。しかし、壁穴の部分からは、波は壁の向こう側へ進むことができます。壁穴から波はどのように進んでいくのでしょうか?波は、壁までは直線をなして進んできましたが、穴から向こうは、穴を中心とした円状に広がって行きます。この波の進み方を回折と呼んでいます。
【波の干渉】
次に、壁に穴を2カ所あけます。そうするとどうなるでしょうか?2つの穴からはそれぞれ円状に広がる波が進みます。それはあたかも、2カ所同時に石を投げ入れたかのように波が広がります。2カ所から広がる波は、互いに衝突します。すると、波の山同士がぶつかると更に高い山になり、谷同士がぶつかれば更に深い谷になります。山と谷がぶつかると打ち消し合って波がなくなってしまいます。それらの結果、水面上には規則的な波ができます。この現象を干渉と呼んでいます。
【波の屈折】
水槽の一部に板を沈めます。すると、その部分だけ水深が浅くなります。波が水深の深いところから浅いところに進んでくると、どのような現象が起きるのでしょうか? 波には伝わる速度というものがありますが、その速度は深いところほど早く、浅いところは遅いという性質があります。波の進行方向が沈めた板の縁(段差)に直角ならば、浅いところに波がのることにより速度が落ちて波と波の間隔が小さくなります。波長が短くなったという言い方もできます。波の進行方向が板の縁と斜めの場合、速度が遅くなることによって、波の進む向きまでが変えられてしまいます。進行方向が変化するので、この現象を波の屈折と呼んでいます。
【音や光も波】
展示品では、水の波で回折や干渉などの現象を見てもらいましたが、これらは水だけでなく、他の波でも生じる現象です。音は空気の波ですし、光は電磁波という波ですので、音でも光でも同じ現象が生じます。
【音や光の回折】
向きあう2人の間に壁を立てても話ができるのは、音が回折する性質があるからです。向きあう2人の間に壁を立てると相手が見えませんから光に回折現象が無いのかというとそうではなくて、光は波長が短いので回折が少ししか起きないからです。壁の向こうが見えるほど回折はしません。しかし、波長の長い光である電波であれば、山の中でも、山をを回りこんで(回折して)きた電波を受信してラジオを聞くことができますよね。
【音や光の干渉】
日常生活で音や光の干渉を実感することはあまりありませんが、実験で体験することは簡単です。2つのスピーカーから同じ音(正弦波というのが望ましいのですが)を出しておいて部屋の中を歩きまわると音が大きく聞こえる場所と小さく聞こえる場所があります。これは音の干渉によるものです。この展示品で2ヶ所の穴から出てくる波が干渉する実験を行うことができますが、これを光で行ったものはヤングの実験と呼ばれている歴史上重要な実験の1つです。ニュートン以降、光の性質が粒であると信じられていましたが、トーマス・ヤングはこの実験で光の性質が波であることを示しました。
【音や光の屈折】
冬の夜に、遠くの鉄橋を渡る列車の音が聞こえることがあります。これは地表付近と上空の空気の温度が違い、温度の異なる空気の中では音の進む速さが変化することにより、進行方向が曲げられて(屈折)、上空に逃げていく音が再び地表に向かうことによって聞こえるものです。光の屈折は日常的に観察することができます。お椀におはしを入れると曲がって見えるのも光の屈折ですし、大きなお風呂で自分から離れた場所の底が浅く見えるのも光の屈折によるものです。
参考資料
視覚でとらえるフォトサイエンス物理図録(2006)数研出版編集部(数研出版)
著者 文 学芸員 山田吉孝