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音の波を見る

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展示作品の狙い

 音が空気の振動であり波であることを見てもらいます。特定の高さの音でパイプの中の小球が跳ね回るの見てもらうことで、パイプの長さと音の高さの関係を知ることができます。また、音の高さと小球の跳ねる間隔から音の速度を知ることもできます。


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知識プラスワン

 音は空気の振動であり、空気を伝わる波です。見えない空気の振動を目で見えるようにしたのが、この展示品です。
 片側がふさがれた長さ2mのパイプのもう片側にはスピーカーが取り付けられていて、パイプの中には発泡スチロール球がたくさん入っています。スピーカーから音を出して、音の高さを変えていくと、あるところで突然発泡スチロール球が飛び跳ねます。音が空気の振動であることが明らかになる瞬間です。
 
【パイプの中に定常波ができる】
 ある特定の音の高さでスチロール球が跳ねるのは、共振という現象によるものです。音の波の長さとパイプの長さがある関係になる時、スピーカーから出る音とパイプの反対側で反射する音がきれいに重なって、パイプ内に定常波と呼ばれる波が生じます。その状態を共振しているといいます。波がきれいに重なるということは、お互いの波の谷や山がぴったり重なるということを意味し、波同士が強め合うことになります。また定常波という言葉が示すとおり、パイプの中で波の谷や山が一定の場所に落ち着くことになります。強まった波が一定の位置に存在するわけですから、パイプの中の特定の場所のスチロール球が激しく揺り動かれることになるわけです。音の高さが変わって、波がきれいに重ならなくなると、波同士が弱め合ったり、波が1カ所に落ち着くことがなくなったりするので、スチロール球は跳ねなくなります。
【音の高さと波長の関係】
 音の高さを変化させていくと、何カ所かの特定の音の高さでスチロール球が跳ねるのが分かります。最も低い音のときはパイプの中央が最も高く跳ねていて、両端になるほど低い跳ね方になります。そこに1つの山があるかのようです。そこからゆっくり音の高さをあげていくと、ある音で2つの山ができるのが観察できます。さらに音を高くしていくと、3つ、4つと山ができるのが分かります。これは音の波の長さ(波長)が短くなっていることを示しています。高い音というのは波長が短く、低い音というのは波長が長いものなのです。
【パイプの中の空気の動き】
 パイプの中に2つ山ができた時のパイプの長さが、鳴っている音の波長に等しくなります。2つの山で1つの波と数えるのですが、不思議な感じがしますね。1つの山で1つの波の方が納得がいくと思いますが、次の理由で2つの山で1つの波になります。それはパイプの中の空気の流れにあります。スチロール球の山頂の部分の空気は左右に激しく動いています。そして谷の部分の空気は左右に動いていません。2つ山の場合、ある瞬間を切り取ると、一方の山頂部の空気が左方向へ動いているとき、もう一方の山頂部は右方向へ動いています。そして次の瞬間は左右への動きが逆になります。左への動きと右への動きでワンセットになりますので、2つ山で1つの波であると考えるのです。その時谷はどうなっているかというと、ある瞬間は左右の山頂から空気が押し寄せてくるので空気がとても濃くなります。次の瞬間はどちらの側の空気も離れていこうとするので空気が薄くなります。谷の部分は空気が薄くなったり濃くなったりを繰り返しています。音というのはこのように空気の濃い薄いが繰り返している波なのです。従ってこのような波は疎密波と呼ばれます。波の進行方向に疎密ができるので、縦方向に波ができるととらえることで、このような波を縦波と呼びます。なお、ここで詳しくは述べませんが、音圧が最も高いのはスチロール球の谷の部分になります。スチロール球が動いていない場所が最も圧力が高くなるというのは不思議な感じがしますが、それは上記の理由によるものです。
【音速がわかる】
 音が伝わる速度、音速は空気中で秒速約340mです。この音速を展示品で知ることができます。2つ山ができたときの音の高さを見ると約170Hzの表示が出ています。これは1秒間に170回振動している音であることを示しています。2つ山の時の波1つの長さはパイプの長さと同じなので、約2m。2mの波が1秒間に170回作られているわけですから、波は1秒間に2 x 170 = 340で、340m進むことになります。これが音速ということになります。
【櫛状に跳ねる不思議】
 スチロール球の山を観察すると、山が櫛状になっているのが分かります。櫛状になる原因はよく分かっていません。



【 参考資料 】

参考資料
視覚でとらえるフォトサイエンス物理図録(2006)数研出版編集部(数研出版)
文 学芸員 山田吉孝

 

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