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電流によって磁石が力を受けることを、音を聞くという体験と磁石が振動するという体験で理解してもらいます。
展示品ではバケツの底を壁にあてると、バケツから音楽が聞こえます。バケツから音楽が聞こえるなんて不思議な感じがしますが、電気と磁石の関係を利用してスピーカーと同じ役目をバケツがしているのです。
バケツの底には磁石が貼りつけてあります。かなり強力なネオジム磁石です。壁の向こうには電線があり電流が流れています。バケツを壁にあてると、電流と磁石の距離が近くなって、磁石は電流から力を受けて動きます。その電流が音楽プレイヤーから流れてくるものであれば、音楽の強弱で強くなったり弱くなったりしています。磁石はその電流に合わせて動かされします。そして磁石はバケツの底を揺り動かし、その振動は音楽となって聞こえてきます。
壁の向こうの電線は、少しの電流でも強い磁界を発生できるように、コイルにしてあります。コイルとは電線をたくさんグルグル巻きにしたものです。
【スピーカーのしくみ】
電流を使って音を聞かせる代表的なものはスピーカーです。テレビやラジオ、学校の教室と身の回りのいたる所にスピーカーはありますね。展示品のバケツとスピーカーは同じ原理で音を出しますが、構造は異なります。展示品のバケツは磁石が振動して音を出しますが、一般的なスピーカーはコイルが振動して音を出します。コーン紙と呼ばれる振動板にコイルが取り付けられていて、固定されている磁石に対してコイルが動くことで音を出します。展示品のバケツのように重たい磁石が動くよりも、軽いコイルが動く方が効率が良いからです。
【スピーカーとマイク】
この展示品は、電流が磁石におよぼす力を音として体験できますが、逆に磁石が電流に影響を及ぼす現象もあります。コイルの近くで磁石を動かすと、コイルに電流が生まれます。展示品のバケツにむかって歌を歌えば、壁の向こうのコイルに電流が流れます。その電流を増幅して別のスピーカーにつなげば歌った歌が大きな音で流れます。バケツがマイクになってしまうのですね。2つのスピーカーを電線でつないで、片方のスピーカーに向かって話せば、もう1つのスピーカーから声が聞こえるという実験は簡単にできます。
【モーター】
電流と磁石を使った身近なものにモーターがあります。モーターは電流を流すと回転しますが、これも電流と磁石の間に力が発生することを利用しています。そしてスピーカーがマイクになったように、モーターは発電機にもなります。モーターの軸を強制的に回転させると、電流が発生します。スピーカーで行ったように、2つのモーターを電線でつないで、片方を手で回すと、もう一方が回転するという実験が簡単にできます。
【電流の磁気作用の発見】
電流で磁石が動くという『電流の磁気作用』のことは、電流の流れる針金の近くに置いた方位磁石が動くことで、 デンマークの物理学者エルステッドが1820年に発見しました。その後すぐに、電流がつくる磁界と電流の関係が数式化されたり、鉄に導線を巻き付けて電気を流すと磁石になる電磁石が発明されたり、磁石を動かすことで電流が発生する電磁誘導を発見したりと、電磁気学が急速に発展しました。
参考資料
視覚でとらえるフォトサイエンス物理図録(2006)数研出版編集部(数研出版)
100円ショップで大実験!(2000) 大山光晴(学習研究社)
読んで納得!図解で理解! 電気のしくみ(2002)新星出版社編集部 (新星出版社)
文 学芸員 山田吉孝