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炎色反応

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展示作品の狙い

 この展示では、炎色反応の実験を目の前で見ることができます。
 アルカリ金属元素やアルカリ土類金属元素などをふくむ試料を、炎の中に入れて高温に熱すると、炎が各元素によって異なる色を示します。この反応を「炎色反応」といいます。
 炎色反応は、原子の中の電子の状態という微小な世界でおきていることを、色という現象として見ているものです。

知識プラスワン

【炎色反応と花火】  
 ガスコンロにかけたなべの煮汁がふきこぼれて、ガスの炎が黄色になったのを見たことはありませんか。食塩をガスの炎にふりかけても、同様に黄色の炎が見えます。これは食塩(塩化ナトリウム)の中のナトリウム原子による炎色反応の色なのです。
 美しい花火の色は、炎色反応を利用したものです。一般的に赤色はストロンチウム化合物やカルシウム化合物、黄色はナトリウム化合物、緑色はバリウム化合物、青色は銅化合物が使われます。他の色はこれらを混ぜてつくります。
【炎色反応のしくみ】
 試料を高温で熱すると、分解されて一個一個ばらばらの原子になります。そして原子の中の電子は、熱エネルギーを吸収して高いエネルギー状態(励起状態)になります。それが再び元の安定な状態(基底状態)にもどるときに、その差分のエネルギーを光など電磁波として発します。原子の種類によって発光するエネルギーの大きさも決まっており、私たち(の目と脳)は、それを光の色の違いとして感じるわけです。
 炎色反応が見られる元素は限られています。発光する電磁波が赤外線や紫外線ではなく可視光である場合のみ、色のついた炎を見ることができるからです。またガスバーナーの炎で容易に熱分解がおこり、ばらばらの原子になりやすいことも必須です。
<炎色反応の例>

元素
1族(アルカリ金属)リチウム(Li)深紅色
ナトリウム(Na)黄色
カリウム(K)淡紫色
ルビジウム(Rb)暗赤色
セシウム(Cs)青紫色
2族(アルカリ土類金属)カルシウム(Ca)橙赤色
ストロンチウム(Sr)深紅色
バリウム(Ba)黄緑色
11族銅(Cu)青緑色
13族ホウ素(B)緑色
ガリウム(Ga)青色
インジウム(In)藍色
タリウム(Tl)淡緑色

【銅の炎色反応】 
 銅はそれだけでは炎色反応をおこしません。しかし、銅線をハロゲン(塩素や臭素やヨウ素)をふくむプラスチックなどといっしょに炎に入れると、緑〜青色の炎色反応が見られます。ハロゲン化物にすると気化しやすくなるからです。これをバイルシュタイン法といって、微量のハロゲンを検出するのに用いられます。例えば、銅線にラップフィルム(ポリ塩化ビニリデンかポリ塩化ビニルと書いてあるもの)を巻いて炎の中に入れると、緑〜青色の炎になります。(有害な気体が出るのでじゅうぶんな注意が必要です。)
 またカラフルな広告を燃やしたときも、緑〜青色の炎が見られることがあります。青・緑の印刷インキには銅フタロシアニンが使われているので、銅の炎色反応による色と思われます。
 銅の例で見るように、炎色反応は、完全に分解された原子からの発光だけでなく、分子からの発光の場合もあります。花火の場合も、Na(黄色)のように原子発光の色もありますし、燃焼中に反応生成したSrCl(深紅色)、SrOH(ピンク色)、BaCl(緑色)、CuCl(青色)、CuOH(薄緑)、CuO(淡赤色)など分子発光の色もあります。
【炎色反応で発見された元素】
 1860年、ドイツのブンゼンとキルヒホッフは、炎色反応と分光器を使って、新元素セシウムを発見しました。未知の元素をふくんだ試料を炎に入れ、その光をプリズムで分けて望遠鏡で観察すると、知られている元素とは違う波長の光(輝線スペクトル)があったのです。その後この方法で、ルビジウムやタリウムなど新元素が続々と見つかりました。
 
【炎色反応以外の炎の色】
(1) ろうそくの赤い炎……高温になったスス(炭素の粒)がだいだい色に光っている熱放射です。物質の種類に関係なく、温度が高くなるにつれ赤色→黄色→白色と連続的に変化していきます。(打上げ花火の白色は、アルミニウムなどの金属微粉末と酸化剤が燃焼して3000度近くの高温になり、いろいろな波長の混ざった白色光が出てくるものです。) 
(2) ガスの青い炎……ガス(気体)が燃えるときに途中で生じる不安定な分子(化学式で書くとC2やCHやOH)が発する光です。しくみは炎色反応とよく似ています。ガスが燃えるときも、不完全燃焼をおこすとススが発生して赤い炎になります。

 


【 参考資料 】

協力 
東邦ガス株式会社
参考資料 
ニュートン別冊 イオンと元素 (2007年) (ニュートンプレス)
光と色の100不思議 (2001)  左巻健男監修(東京書籍)
いまさらきけない化学の疑問(2009) 左巻健男監修(技術評論社)
元素発見の歴史2(1989) ウィークス 他(朝倉書店)
文 学芸員 石田恵子

 

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