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展示ガイド

太陽を観測する -太陽望遠鏡-

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展示作品の狙い

 理工館屋上にある口径30cmの太陽望遠鏡からの光を、真空にしたパイプで展示室に導き、直径194cmの巨大太陽像(2010年現在、常設では世界一)をご覧いただけます。また光の一部を回折格子で分光し、太陽のスペクトルも投影しています。過去の太陽表面の画像を見ることができる大型タッチパネルモニターもあり、我々に最も近い恒星である、太陽の姿を観測していただけます。

知識プラスワン

【太陽専用の望遠鏡】
 太陽の光はとても強いので、望遠鏡や双眼鏡などを向けてはいけません。虫眼鏡で光を集めただけで火がつくくらいに強い光ですので、失明の危険があります。
 そこで、この展示物の太陽望遠鏡は、覗くのではなく、スクリーンに大きく映しだす形をしています。そこで安全に、大迫力の太陽像や黒点などをご覧いただけます。この形式の太陽望遠鏡は、旧天文館2階の太陽実験室(25cm太陽望遠鏡)に設置されたのが初めて(1987年)です。今回の建て替えで、新しい建物の形にあわせて最新の技術で再設計したのが30cm太陽望遠鏡です。
【真空パイプで鮮やかな太陽像を】
 望遠鏡で取り入れた光はスクリーンに映し出されるまで長いパイプの中を通ってきます。太陽の光が通ると、パイプの中の空気の温度が上がってしまいます。すると、空気の対流が起こり、太陽像が歪んでしまいます。それはかげろうの向こうに景色を見るようなものです。そこでこの展示品ではパイプの中の空気を抜いて真空にしてあります。それにより鮮明な太陽像を見ることができるのです。
【黒点と白斑】
 太陽の表面には黒点や他より明るい白斑とよばれる部分があります。また黒点の周囲を薄暗い半暗部が取り囲んでいます。黒点はまわりと比較して温度が低い部分で、黒点のない部分の表面温度は約6000K、黒点は約4000K、半暗部は約5000Kです。(Kは絶対温度の事で、0Kは-273.15度であり、273.15Kが0度となります。)黒点の実際の温度は高いのですが、まわりに比べると温度が低いので暗く見えるのです。その証拠に、スクリーンに手をかざして影をつくると、影のほうがより黒くみえることがわかるでしょう。
 温度の高い白斑(約7000K)はまわりより明るく白く見えます。黒点の逆ですね。白斑は黒点に伴っていることが多く、太陽の周辺部にあるときの方が見やすいので、周辺の黒点の近くを探すのがよいでしょう。
 地球大気の状態が良いと太陽像がゆらつかずにじっと安定します。そのような時は「粒状斑」を観察しましょう。太陽表面全体に細かい粒模様が見えたら、それが粒状斑です。よく見ると、米粒のような明るい粒とその境目の黒い細い模様からできています。粒状斑は太陽表面の対流運動によるもので、熱い対流が昇ってくるところが明るい部分で、冷えて沈み込んでいく部分が黒い部分です。これと同じ様な粒状模様はお椀の味噌汁を静かに置いておくと見ることができます。
【Hα線による太陽像】
 Hα線太陽像は、水素原子が放出する波長656nm(赤色)のHα線という光だけで太陽を見たときの表面のようすです。Hα線で見る太陽は、展示の中央に映し出された太陽とは表情が違います。床に投影された太陽は強い光を放つ「光球」という部分で、Hα線によるものは光球の外側を薄く包み込む「彩層」という部分です。彩層を観測すると、プロミネンスやフレア(爆発的なエネルギー放出)の活動などが分かります。

 


【 参考資料 】

参考資料
宇宙のひみつ(1992)福江純(学習研究社)
太陽のはなし(1982)桜井邦朋(ポプラ社)
太陽をつかまえる(1982)押田勇雄 監修 (ほるぷ出版)
星の進化(1992)斉尾英行(培風館 )
文 学芸員 学芸課天文係

 

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