科学館を利用する > 展示ガイド > 展示フロアマップ > 宇宙から地球を解き明かすー世界のロケットと地球観測衛星ー
この展示は、(1)壁面グラフィック(2)サテライトステーション(3)天井からつるした「いぶき GOSAT」1/5模型(4)「いぶきの目で見る地球温暖化」の4つの展示の集合です。
日本の温室効果ガス観測実験衛星「いぶき GOSAT」を解説中心に据えたため、製造過程を壁面グラフィックで、衛星の構造を1/5模型で、センサーによる観測の例を「いぶきの目で見る地球温暖化」で確かめてみてください。
サテライトステーションでは、地球観測衛星の模型がテーブル上にあります。また、いすに腰かけて情報端末を使い活躍する地球観測衛星を調べることができます。
【地球観測衛星の観測】
宇宙から地球を観測することで、地球全体の状態や変化を観測することができます。二酸化炭素などの温室効果ガスの観測から地球温暖化との関係を調査します。北極と南極上空のオゾンホールの変化の観測も行います。海洋の観測で海の汚染やプランクトンの大量発生なども観測できます。通常の気象観測の他、森林の減少や、自然災害発生時の様子を調査することで被害の拡大を防ぐことにつながります。また、漁業や地下資源発見にも役立ちます。
【リモートセンシング】
リモートセンシングとは、離れた場所から観測してそこにあるものをとらえることで、地球観測衛星は宇宙という離れた場所から地表の様子や、大気の様子を観測します。直接物質を採取するわけではありませんが、人間が目で感じる電磁波である可視光線による撮影の他、赤外線を使えば地表の熱をとらえることができ、大気中の雲(水蒸気)の観測もできます。また、人工衛星からマイクロ波(電波)を発射し、その反射を観測する方法もあります。マイクロ波は雲を通り抜けるため、雲に影響を受けずに地表の観測ができます。
人工衛星の軌道の変化から、地球の重力の変化を求め、その結果、地下の物質を推定することもできます。
「いぶきの目で見る地球温暖化」では、赤外線カメラを用いて赤外線が「二酸化炭素ガス」と「窒素ガス」を通ったときの違いを見くらべることができます。地球観測衛星が行う観測を擬似的に確かめることができます。
【衛星の軌道(低高度)】
人工衛星が地球の周りを回る道すじを「軌道」といいます。
比較的低高度(地上数百キロメートル)に人工衛星を打ち上げると、地球を1時間から2時間程度で周回することになります。この時、北極と南極の両極を通るような軌道に人工衛星を打ち上げて周回させると、南北方向の周回に合わせて地球を観測することができます。人工衛星が周回する間も地球は東向きに自転しています。ある地点から観測を始めた人工衛星が地球を周回すると、自転によって先の場所よりも少し西の上空にさしかかることになります。こうした観測を続ければ東西方向にも観測場所が移動するため、何周か地球を周回する間に地球の全地域を観測することができます。こうした軌道を太陽同期準回軌道(Sun-Synchronous Sub-Recurrent)といいます。比較的低高度であり地球に近いため、高分解能の観測装置を使えば地上数メートル程度の物体を見分けることができます。また、広範囲を観測する装置では、例えば中部地方全体程度の範囲を一度に観測することができます。温室効果ガス観測衛星「いぶき GOSAT」は高度約700キロメートルの極軌道を周回しながら、地球全体の大気の変化を観測します。
【衛星の軌道(静止衛星)】
赤道上約36000キロメートルでは公転周期がちょうど24時間になります。この時、地球の自転と同じ向きに公転する軌道に人工衛星をのせると、地球の自転周期と人工衛星の公転周期がちょうど同じになり、人工衛星はいつも地球の同じ場所の上空にとどまることになります。この軌道を静止軌道、衛星を静止衛星と言います。衛星からは、地球の同じ面を観測でき、地球のほぼ半面を一度に観測することができるため、雲の写真を撮影するおなじみの気象観測衛星などに利用されます。
地球観測衛星ではありませんが、衛星放送に使う通信衛星も静止軌道に打ち上げるものがあります。静止衛星は地上から決まった向きにあるので、家庭用のパラボラアンテナも一度向きを合わせて取り付ければ、向きを変える必要がありません。
サテライトステーションの地球儀とその周囲にある人工衛星の軌道は実際の地球と衛星軌道と同縮尺になっています。地球を回る人工衛星の軌道の種類と高度を直感的に見くらべることができます。
【いぶき GOSAT の名称】
JAXAが衛星打ち上げ前に衛星の名称を公募して「いぶき」と命名されました。これは衛星の愛称です。一方、この衛星を用いて温室効果ガス観測を行っている国立環境研究所はプロジェクト名としてGOSAT(Greenhouse gases Observing SATellite)を用いているため、今回は並記しました。
参考資料
地球観測ガイドブック(2010)宇宙航空研究開発機構 広報部
国立環境研究所GOSATプロジェクト URL:http://www.gosat.nies.go.jp/index.html
文 学芸員 鈴木雅夫