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街の中心部では、晴れていても星が少ししか見えません。これは、都会の空気がよごれていて星の光がとどかないからではなく、街路灯などの明かりが上にもれて、夜空を照らすためです。空が明るくなると、星の明るさとの差が小さくなり、星が見えにくくなるのです。照明の景観や周辺環境への影響について配慮が十分でない状況を「光害」といいます。適切な光環境をつくることができれば、街中でもたくさんの星が見える可能性があるのです。
名古屋市科学館では、光害への対策をした夜間照明を設置しています。また、天文館5Fの「宇宙のすがた」展示室に関連の展示がありますので、ぜひご覧下さい。
【光害対策の歴史】
光害対策とは、照明が設置されている目的を踏まえて、より良い照明環境を作り上げることです。公園灯の場合は、公園を十分に照らして安全な環境を作った上で、誰も見ていない上方に光が出ないようにし、電気の消費量を抑えます。その結果、空を照らし上げることが少なくなり、星がよく見えるようになるのです。
名古屋市科学館では1980年代から、市街地でより良く星を見るにはどうしたら良いかを研究してきました。そして、空気の汚れよりも街明かりが空を照らし上げてしまい、星が見えにくくなっていることを示しました。そこで屋外照明に対策を施せば、省エネルギーと、より良い星空の両方を得ることができます。名古屋市として環境庁(当時)にも働きかけを行い、1998年の光害対策ガイドラインの策定につながったのです。
同時に環境庁(当時)の光害対策モデル事業として、名古屋市科学館の周囲に光害対策を施した公園灯を開発し、屋外展示パネルと共に設置しました。2011年の改築で当時の公園灯は役目を終わり、現在展示されている新世代の公園灯にバトンを渡しました。光害対策ガイドラインは照明機器メーカーも含めて策定を行いました。そこでメーカーも対策済みの明かりをカタログのトップに持ってきたり、対策の数値を明記したりしてきました。前回は目的の性能を実現するためには、新規開発をしなければならなかった光害対策公園灯も、今回は複数ある対策済みの既製品の中から照明計画に見合ったものを選ぶことができるようにまでなりました。これだけ、光害対策が効果を上げたということになります。何かの折に屋外照明を交換する際は、ぜひ光害対策済みの照
明器具を選んでください。省エネと星空の両方に効果があります。
参考資料 「市街地における「光害」の調査研究」名古屋市科学館紀要第17号
(1991)毛利勝廣他(名古屋市科学館)
「市街地における「光害」の調査研究~その2~」名古屋市科学館紀要
第19号(1993)毛利勝廣他(名古屋市科学館)
「市街地における「光害」の調査研究~その3~」名古屋市科学館紀要
第20号(1994)毛利勝廣他(名古屋市科学館)
「光害の調査と実態」名古屋市科学館紀要第25号(1999)毛利勝廣
他(名古屋市科学館)
「光害の調査・普及に関する科学館・環境局・環境庁の連携について」
名古屋市科学館紀要第27号(2001)鈴木雅夫他(名古屋市科学館)
「光害の展示制作と市民参加による実態調査」名古屋市科学館紀要
第30号(2004)毛利勝廣他(名古屋市科学館)
「光害の展示制作と市民参加による実態調査2」名古屋市科学館紀要
第31号(2005)毛利勝廣他(名古屋市科学館)
「「市街光と星空」展示制作」名古屋市科学館紀要第32号(2006)
毛利勝廣他(名古屋市科学館)
「光害調査新手法の開発」名古屋市科学館紀要第34号(2008)
毛利勝廣他(名古屋市科学館)
環境省のサイト 環境省光害対策ガイドライン
http://www.env.go.jp/air/life/hikari_g/
著者: 学芸課天文係