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古代の人々にとって、天は手の届かない神々の世界でした。多くの民族が古くから天空の神々、とりわけ太陽と月を崇拝し、やがてその動きから季節や月日の移り変わりを知るようになりました。
また、星空を複雑に動き回る5つの惑星も、メソポタミア文明の時代からすでに知られていました。人々は惑星の動きから神のメッセージを読み取るため、その動きをくわしく観察しました。これが占星術のはじまりで、やがてそれが天文学へとつながっていきました。
この展示では古代の人々が考えた宇宙について紹介します。
【ストーンヘンジ】
古代の人々にとって、太陽が最も高く昇る夏至の日は、太陽の聖なる力が最高潮に達する特別な日でした。また、冬至は太陽の力が最も衰える日とされ、冬至の太陽が沈んで行く先に死者の国があると考えられていました。夏至や冬至の太陽の出没方位に合わせて作られた古代遺跡が、世界各地に残されています。
その代表的な例が、イギリス南部のソールズベリー平原にある新石器時代の巨石遺跡ストーンヘンジで、夏至の太陽が昇る方角に向けて、高さ4〜6メートル、重さ25〜30トンという巨大な石が何十個も環状に配置されています。いまではかなり崩れてしまっていますが、元来は、巨石で造られた直径約30メートルの環状の柵(サーセンサークル)と、その内側に鳥居のような形に組まれた三石塔(トリリトン)が5基、馬蹄形に配置されていました。これらは、直径約 100メートルの円形の土手の上に築かれ、土手からは北東方向にまっすぐな道(アベニュー)が伸びていて、アベニューを30メートルほど進んだ先に、かかと石(ヒールストーン)と呼ばれる高さ6メートル、重さ35トンの巨石が立てられています。
遺跡全体の主軸は正確に夏至の日の出の方向に合わせて造られているため、夏至の日、遺跡の内部中央で日の出を観察すると、太陽がヒールストーンから昇るのが見られます。言いかえれば、一年で最も神聖な夏至の朝日が、あたかも遺跡に導かれるように、アベニューに沿ってストーンサークルの中心に射し込んでくるのです。中央に馬蹄形に配置されたトリリトンは、その聖なる太陽の光を受け止めるキャッチャーミットのようなイメージを受けます。ストーンヘンジを作った人々は、夏至の朝日を捕捉し、太陽の聖なるエネルギーを地上に具現しようと考えたのかもしれません。
参考資料
ストーンヘンジの謎(1983)G.S.ホーキング/小泉源太郎(大陸書房)
古代人の宇宙(1984)ブレッヒャー、ファイタグ/花野秀男(白揚社)
文 学芸課 天文係