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日本最大の木曽ヒノキ

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展示作品の狙い

 木の年輪に刻まれた地球環境の歴史を感じてもらうことを目的としています。

知識プラスワン

 この木曽ヒノキは岐阜県恵那郡加子母村にあったもので、1954年(昭和29年)に付知営林署により伐採されたものです。伐採後つくられた年輪板の調査で925年の年輪が確認されました。現地に残っている伐根の推定樹齢25年を加え、総樹齢950年とされています。すなわち、この木曽ヒノキは西暦1004年に芽吹いたことになります。ここに見える年輪は、950年間の年月を記録しているのです。
 さて、ヒノキの年輪から過去の地球環境が読みとれるのでしょうか?
 年輪の幅は、成長する速さを示しています。ですから、気温で変化するだろうということは誰もが想像できるでしょう。暖かい時期にはよく成長するので年輪幅は太くなり、寒い時期には成長しにくいので年輪幅は細くなると考えられます。そこで、年輪幅から、中部山岳地域の過去の気温変化を推定してみようという研究が行われ、右のグラフのような結果を得ています。西暦1200年頃から1800年代前半までの寒い時期(小氷期)と、その後の温暖化がはっきり読みとれます。
 実際には、年輪幅は、気温だけでなく、他の要因によっても変化するので、そう単純には結果は出せません。降水量・二酸化炭素量・日射量なども影響しますし、高温多湿の日本では、気候要因よりもむしろ隣接する木との競合による影響が大きいと考えられています。そこで、多くの木の年輪を平均してデータを出しています。また、樹齢とともに年輪幅は小さくなるので、この影響も考慮しなければなりません。さらに、現生の木だけでは古いデータが十分得られないので、倒木の年輪をつないでいくことも必要です。
 このように、膨大なデータから、考えられる様々な影響を取り除いて、年輪から過去の気温変動を推定しているのです。
 科学の目で見れば、木の年輪に隠された過去の地球環境の記録を解読できるのです。
図 木曽ヒノキの年輪から推定された中部山岳地域の気温変動グラフ(末田達彦, 1994年) 1904年から1959年の平均気温との差を示す。1800年代以降温暖化していることがわかる。

 


【 参考資料 】

参考資料
縞縞学(1995年)川上紳一(東京大学出版会)
「年輪年代学と地球環境」(1995年)末田達彦 山林95.8号, p.48-59
資料提供東海財団、つけち創工社、名古屋大学年代測定資料センター
文 学芸員 西本昌司

 

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