科学館を利用する > 展示ガイド > キーワード検索 > 「ふ」ではじまるキーワード > キーワード【分解】 > 消化・吸収・排出のふしぎ
消化・吸収・排出について、基本的なことがらを紹介した展示品です。
養分をとりこむために食べ物を十分小さくすることを消化といい、吸収された養分が各部で使われて変化し、不要になったものが体外に出される排出というしくみについて、
(1)消化管(口腔、食道、小腸、大腸)
(2)その他の主な消化器官(肝臓、膵臓、胆のう)
(3)吸収した養分の通り道(小腸の血管、リンパ管)
(4)腎臓と膀胱
の映像画面と、その裏側で関係する知識を3つ、文章と絵で紹介しています。
【消化と吸収】
食べ物は消化管を通る間に細かくなり、分解されます。食べ物を送る消化管の運動を蠕動運動といい、十分小さくなると養分は小腸で吸収されて血管やリンパに入り各部に運ばれ、残りは大腸で水分が吸収され便として肛門から排出されます。
【消化液】
食べ物を分解し、吸収するためになくてはならないのが消化液です。消化管のいろいろなところでそれぞれ違う消化液が分泌されています。また、その多くは「消化酵素(しょうかこうそ)」という食べ物を分解する成分を含んでいます。消化液のうち、代表的なものを紹介しておきましょう。
【肝臓のはたらき】
肝臓の重さは1.0から1.5kg、人体でも1、2を争うヘビー級の臓器ですが、この中では実にたくさんの化学反応が行われています。
化学反応といっても人工的に行おうとするとフラスコやビーカーをいくつも使い、段階ごとに容器を変えて長い時間をかけなければなりませんが、肝臓は小さな細胞の中でいくつもの反応を同時進行させ、きわめて短時間で膨大な量の物質を変化させることができます。
代表的な3つは養分をためる(貯蔵)・無害化する(解毒作用)・消化液 胆汁を作る です。
炭水化物を分解してできたブドウ糖から、栄養分の貯蔵のためにグリコーゲンを合成します。このグリコーゲンは血液中のブドウ糖の濃度が低下してくると分解されてブドウ糖になります。そして、多くのタンパク質を作り出すこと(合成)や分解も行われています。
毒物の無毒化(解毒:げどく)で、一番よく知られているのはアルコールの分解でしょう。アルコールは他の物質より先に肝臓で分解され、無毒化されます。
さらに、脂肪の消化吸収に重要な消化液・胆汁を作ります。これをためておく袋が胆のうです。
【肝小葉】
肝臓にはたくさんの細胞が直径1ミリ、高さ2ミリくらいの多角形の柱状のかたまりになった中心を血管が通っている構造があります。この柱を「肝小葉(かんしょうよう)」といい、肝臓の基本的な単位です。
【門脈】
人体のすみずみから心臓へもどる静脈は、一般的には心臓にちかづくにつれてだんだん集まって太くなってきます。ところが、肝臓の近くを通る血管は、一度太くなったものがまた細く枝分かれして肝臓の中に広がり、そしてまた集まります。このように、両端に毛細血管をもつ血管を「門脈(もんみゃく)」といいます。門脈は、肝臓の細胞一個一個にまで血液を運び、化学反応を行わせるためのしくみですが、消化管で吸収した養分をたくわえ、血液中の濃度を一定に保つはたらきもあります。
なお、肝臓に酸素を多く含んだ血液を運ぶ血管(肝動脈)は門脈とは別にありますが、肝臓から出ていく血管は門脈と同じ肝静脈です。
【アルコールと肝臓】
アルコール(エチルアルコール)は、体内でアセトアルデヒドに変化しますが、これは人体にとって毒ですので、さらに酢酸に変える必要があります。日本人には酢酸を作り出すはたらきが生まれつき弱い人が多く、いつまでもアセトアルデヒドが体内にあるために気分が悪くなったり、すぐ赤くなって胸がドキドキしたりします。このような人にお酒を無理に飲ませるのは毒を飲ませるのと同じ暴力行為といえるでしょう。
なお、生まれつき酢酸が作れないからといって、肝臓のその他の機能が悪いということは全くありません。むしろ、酒が強い人はアルコールを長期にわたって飲みすぎると、肝臓のはたらきが悪くなることが心配です(女性は男性より短い期間・少ない量で肝臓を悪くします)。
【腎臓のはたらき】
腎臓は「にぎりこぶし」くらいの大きさで、「そらまめ」のような形をしていて、背中に近い方のウエストより少し高い位置に左右1つずつあります。
この中では、私たちの体の中で余分になった水分や塩類、不要なものを体外に出すために尿を作っています。ぼうこうはそれを外に出すため、一時的にためておく袋です。
腎臓の中を通り抜ける血液(1日に約150リットル)に含まれる水分は、ほぼすべて一度毛細血管の外に出ます。しかし、尿として体外に出されるのはそのうちわずか1%、約1.5リットルにすぎません。つまり、のこりの99%は回収されるのです。このはたらきを「再吸収」といい、私たちのからだは水分や塩類の濃度がある範囲に保たれてうまく機能しています。
また、水分だけでなく塩類(ナトリウムやカリウム、カルシウムなど)や糖分(ブドウ糖)も一度血管の外に出てからまた取り戻します。反対に、不要なもの(尿素、クレアチニンなど)は一度血管の外に出ると、あまり回収されません。少ない水分で不要なものだけ尿として排出するのです。
【腎臓の構造】
腎臓の内側から、血管をたどっていくと、外側に向かってどんどん枝分かれして細い毛細血管になっていて、毛糸の玉のようになっています(糸球体:しきゅうたい)。この糸球体をうけるおわんのような形の先をした細長い管(尿細管)がのびていて、ヘアピンのように曲がっています。この毛細血管と尿細管とがからみあって作る小さなかたまりで行われる複雑な調節によって血液はきれいになるのです。
腎臓を縦に2つに切ると、断面にこのしくみがたくさんみえます。尿細管は集まってぼうこうへつながる輸尿管になります。
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厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト アルコールの吸収と分解
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絵と文 学芸員 堀内智子