科学館を利用する > 展示ガイド > キーワード検索 > 「し」ではじまるキーワード > キーワード【シナプス】 > 自分の反応速度を調べてみよう
合図を感じたら体験スイッチから手を離します。合図は「光」と「音」の2つあり、それぞれの合図から手を離すまでの時間を3回ずつ実際に測ります。
平均の時間も結果に表示されます。
どちらの合図に対する反応の方が速いか、比べてみてください。結果を他の人と比べてみるとさらに楽しめるでしょう。
なお、いちどに体験できるのは1人だけです。
目でものが見え、耳で音が聞こえるのは、どちらも脳に情報が伝えられるからです。目と耳それぞれで、情報が伝わる道筋について、図を見てみましょう。
【目でものが見えるしくみ】
視覚:目に入った光が目の中の「網膜」に映り、光の強さや色などの情報を次のような順序で神経が脳に伝えます。
<角膜>目の「黒目」の外側を保護している透明な膜です。
<瞳孔(どうこう)>黒目の真ん中の真っ黒なひとみの部分です。目の中に入った光が外に反射されて出てこないので黒く見えますが、黒い色がついているわけではありません。自分の虹彩を鏡で観察してみましょう。明るいときと暗いときで、大きさが変化するのがわかります。
<虹彩(こうさい)>瞳孔のまわりの色のついた部分が虹彩で、瞳孔の大きさを変えて網膜に入る光の量を調節しています。この部分の色はメラニン色素の量のちがいによって個人差があり、日本人の多くは茶色です。
<水晶体>ヒトの目の水晶体は、見ているものとの距離によって、厚さを変えてピントを合わせることのできる、しなやかなレンズです。水晶体のまわりにある毛様体が収縮することによって水晶体を外側に引っ張っている毛様小帯という糸がゆるみ、水晶体が厚くなり、近くのものにピントが合います。
加齢によって水晶体の弾力がなくなると、近くのものが見えにくくなる老眼になります。
<網膜>
水晶体の奥にある硝子体を通り抜けた光は、奥にある網膜に届きます。ここには光を感じる細胞(視細胞)が2種類並んでいます。
・錐(すい)体細胞:明るいところではたらき、色や形がはっきりわかる
・桿(かん)体細胞:薄暗いところではたらき、色や形がはっきりとはわからない
視細胞が受け取った光の刺激の情報は双極細胞に、そして視神経から脳の視覚野に伝わって処理されます。
<黄斑(おうはん)と盲斑(もうはん)>
網膜の中心付近にとくに視細胞が密集した「黄斑」には錐体細胞が多く、ここに映った像は特によく見えます。
少し鼻側に寄ったところに、視神経と血管が網膜に出入りしている「盲斑」があり、視細胞がないためここに像が映っても、ものを見ることができません。
【耳で音が聞こえるしくみ】
耳の構造は大きく外耳・中耳・内耳の3つに分けられます。耳の外の音の強さや高さ(震え方)などの情報は次のような順序で伝えられます。
<外耳>通常外から見える耳の部分(耳介または耳殻)から鼓膜までの部分で、音を集める形をしています。
・鼓膜(こまく):耳の穴の奥にあるうすい膜です。音(空気のふるえ)が、鼓膜をふるわせます。
<中耳>鼓膜から内側の部分で、耳管という管があり、のどへ通じています。
・耳小骨(じしょうこつ):鼓膜より内側には、小さな骨が3つつながっています。ふるえは3つの骨を順番に伝わっていきます。
耳小骨は指先にのるほど小さく、人体で最も小さな骨です。鼓膜側から「つち骨・きぬた骨・あぶみ骨」の名前で呼ばれます。「つち」(a)はいわゆるハンマー、「きぬた」(b)は布などをたたいてやわらかくする道具、「あぶみ」(c)は馬にのるときに使うくらの左右にある足をかけるところです。
<内耳>さらに内側で、カタツムリのような蝸牛(かぎゅう)があります。
・蝸牛(かぎゅう):かたつむりのような形の器官です。この中には音を感じ取る細胞と神経があり空気ではなくリンパ液が満たされています。
蝸牛のうずまきをのばすと3階建ての構造をしています。音の振動は、まず3階に伝えられ、一度奥まで伝わったあと、1階をもどってきて2階の床が振動します。このとき音の高さによって特定の部分(高い音は入り口付近、低い音は奥の方)がとくに強く振動します。
・有毛細胞(ゆうもうさいぼう):内耳にある感覚毛の生えた細胞で、ふるえることで音がきたという信号を伝えます。
・聴神経(ちょうしんけい):感覚毛のふるえのようすから、どんな音か(大きさ、高さなど)を脳へ伝えます。
・脳:音についての情報を受け取ります。
【神経細胞のつなぎめ シナプス】
刺激を受け取った神経細胞(ニューロン)の中を細胞体から軸索の端へ電気的な信号が伝わっていきます。ヒトのニューロンでは、軸索を覆うミエリン鞘(しょう)とそのすきまのランビエ絞輪があることで伝わる速度が大きくなります。
刺激を受け取ってから情報を脳に伝える細胞は1つとは限らず、2つ以上の細胞をリレーして順番にはたらくことが一般的です。2つの神経細胞はつながっているのではなく、とてもせまいすきま(シナプス間隙)があります。すきまの前と後の細胞膜を含めた構造を「シナプス」と呼びます。
【すきまを超えて情報を伝える】
神経細胞の軸索の端(神経終末)にあるシナプス小胞から、「神経伝達物質」が放出され、それが次の細胞(神経や筋肉など)の 受容体に結合することで信号が伝わります。これには各細胞にイオンが流れ込むことも関係しています。視覚では、伝わる経路に聴覚より神経細胞が多く、シナプスも多いため反応時間が長くなると考えることができます。
別の展示品「神経系・内分泌系のふしぎ」でも、神経細胞(ニューロン)やシナプスのしくみについて紹介しています。
企画協力:自然科学研究機構 生理学研究所で開発の装置「Brain Responder(ブレイン・レスポンダー)」を参考にしています。
文:学芸員 堀内智子
<参考資料>
プロが教える脳のすべてがわかる本 (2011年) 岩田誠(監修)(ナツメ社)
マンガでわかる 人体のしくみ (2012年) 坂井建雄(監修) 沢田麻間(画) サイドランチ(画)(池田書店)
シリーズ感覚のふしぎ 第1回視覚のしくみ 2015年11月号 NEWTON
シリーズ感覚のふしぎ 第4回聴覚と平衡感覚のしくみ 2016年2月号 NEWTON
シリーズ感覚のふしぎ 第5回皮膚感覚のしくみ 2016年3月号 NEWTON
NEWTON別冊 感覚-驚異のしくみ (2016年) (ニュートンプレス)
シリーズ脳とニューロン 第2回 記憶のしくみ 研究最前線 2016年5月号 NEWTON
大人のための図鑑 脳と心のしくみ (2015年) 池谷裕二(監修) (新星出版社)