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下村脩

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展示作品の狙い

 下村脩博士は、オワンクラゲ Aequorea victoria から緑色蛍光タンパク質GFPを発見した功績で2008年にノーベル化学賞を受賞しました。
 GFPはその遺伝子をあらゆる生物のゲノムに組み込んで、生物の体の中で光らせて目印をつけることができます。このため、生物の体の中でおきる様々な生命現象を、細胞や生物を生かしたまま、時間を追って観察することができるようになりました。GFPは現在の生命科学研究に必要不可欠なツールになっています。

知識プラスワン

 下村博士は、発光生物が光るしくみを化学的に解き明かすことをライフワークにしていました。
 名古屋大学での研究員時代に、海にすむ甲殻類の仲間のウミホタル Vargula hilgendorfii から発光物質ルシフェリンの結晶化に成功すると、アメリカのプリンストン大学にて、刺激を与えると傘の縁が青く光るオワンクラゲの研究を始めます。そしてオワンクラゲの発光物質イクオリンを発見し、その構造を決定しました。GFPはイクオリンの研究の過程で副産物として見つかったのです。

【下村博士とクラゲ採集】
 下村博士は、イクオリンの研究のためにアメリカ北西部のフライデーハーバーで19年間で85万匹ものオワンクラゲを採集しました。体験展示「オワンクラゲを捕まえよう」ではこのクラゲ採りを映像で体験できます。1匹のクラゲから集められるイクオリンは非常に少なく、下村博士が研究に対して凄まじい努力をされたことが分かるでしょう。なお、オワンクラゲは普段は光っていませんが、刺激を与えると光ります。捕まえようと網ですくうと、その瞬間オワンクラゲは緑色に光るのです。展示ではそんな様子も再現しています。

【GFPの発見とバイオイメージング】
 下村博士がGFPを発見した後、マーチン・チャルフィー博士がGFPが生きた線虫の中で発光することを発見し、ロジャー・チェン博士がGFPの遺伝子を変異させて緑色以外にも様々な蛍光色を作成しました。二人の博士と下村博士はノーベル賞を一緒に受賞しています。
 生物の体内でおこる現象を目で見るための技術をバイオイメージングといい、GFPの発見からバイオイメージングの世界は大きく広がりました。オワンクラゲから見つかったGFPを遺伝子に組み込むことによって、あらゆる生きた生物の体内で、遺伝子の働きを可視化できるようになったのです。GFPの発見前には、生物を生かした状態で生命現象を可視化することはできませんでした。展示ではGFPの発見以降に広がったバイオイメージングの世界の一部を紹介しています。

【下村博士とノーベル賞】
 下村博士に関わる実物展示として、実験道具や研究に関わる書籍などを展示しています。実験に使っていた自作のピペットや、GFPの発見を記録したノートのレプリカ、ノーベル賞受賞者が必ずノーベル財団に提出する伝記など、貴重な資料ばかりです。ぜひ近くで見てみてください。

 


【 参考資料 】

下村 脩(2009) クラゲの光に魅せられて ノーベル化学賞の原点. 朝日新聞出版社
下村 脩(2010) クラゲに学ぶ ノーベル賞への道. 長崎文献社

 

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