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いろいろな形の鏡が展示されています。映った像を楽しみながら、光の反射について興味をもっていただきたいと思います。
【光の反射と像】
光が物体の表面ではね返される現象を「反射」といいます。鏡やよく磨かれた金属などの表面では、ほとんどの光がはね返されるため物体が映って見えます。鏡などに映って見えるものを「像」といいます。
さて、光が反射するとき、入ってきた光(入射光)と反射する光(反射光)の角度は等しくなります(図)。平らな鏡に映る像が実際のサイズと同じに見えるのは、このためなのです。
【反射面の形を変えると見え方も変わる】
鏡の表面の形を湾曲させると、像の大きさを変えることができます。
たとえば、曲面の外側を反射面とした鏡(凸面鏡)では、像は小さくなります。しかし、小さな面積に広い範囲の風景を映すことができるため、カーブミラーや自動車などのバックミラーに使われています。
一方、曲面の内側を反射面とした鏡(凹面鏡)を近くで見ると、像が大きくなります。しかし、離れて見ると、上下左右が反対になって小さく見えます。きれいなスプーンで試してみて下さい。凹面鏡には反射光が1点に集まる焦点があり、見る場所がそれより前か後ろかで像が変わります。
このように、反射面の形を変えるということは、反射光の向きを変えていることなのです。鏡の表面を複雑に曲げてしまうと、像が伸びたり縮んだりして、像がゆがんで見えるというわけです。
【複数の鏡を組み合わせて】
複数の鏡を組み合わせて使うと、いくつもの像をつくることができます。三面鏡や万華鏡はその例です。「もじゃもじゃかがみ」なども、複数の鏡を組み合わせたトリックです。光の進行方向を考えながら見てみるとおもしろいでしょう。
ところで、3枚の平面の鏡を互いに直角に組み合わせて三角錐状にしたものを「コーナーキューブ」と言います。 これに光を入射させると、必ずやってきた方向に反射します。このことを利用して、 自転車や道路面などに設置してある反射板に使われています。発光していないのにヘッドライトが当たるとよく光るのはこのためです。アポロが月面に着陸したとき、月面にコーナーキューブの反射鏡が設置されました。地球からレーザー光線を当てて反射させることによって、月と地球の正確な距離を測定するのに用いられました。
【展示品のいろいろな鏡】
展示品の鏡の名前としくみ、どんなふうに見えるかは次の通りです。
(1)あくしゅかがみ 1枚の凹面鏡です。上下が逆さに映るので、自分の手を出したのと反対から握手するように映った手が出て見えます。
(2)もじゃもじゃかがみ 3枚の平面鏡で三角錐を作っています。三角錐の頂点を切った窓から手を入れてもらって反対側から見ると、たくさんの手がもじゃもじゃと生えて見えます。
(3)すきとおるかがみ 表裏両面映る細い平面鏡を「く」の字型に直交させた柱が、何本も立ててあります。鏡のむこうのものが、鏡が透き通っているかのように映って見えます。
(4)おっかけかがみ 3枚の平面鏡がサイコロのすみのように互いに直交しています(コーナーキューブ)。入射光と同じ方向に反射光が出ていくので、どこからのぞきこんでも3枚の直交する点に自分を見つめる自分が見えます。
(5)へんしんかがみ いろいろな曲面の鏡3種類です。やせたり太ったり、伸びたり縮んだりした自分が映ります。
(6)はんたいかがみ 2枚の平面鏡が直交するように置いてあります。1枚の鏡の場合とは、左右が反対に映ります。
(7)つかめない? 2枚の凹面鏡が上下に組み合わせてあります。下の鏡の真ん中に置いたものが浮き上がって見え、つかもうとしてもつかめません。
参考資料
ザ・サイエンス・ヴィジュアル3 光(1993年)デイヴィッド・バーニー(東京書箱)
文 学芸員 西本昌司