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重い荷を吊り上げ、上下左右に移動させるクレーン。建設現場で大活躍する機械です。いつも見るわけではありませんが、たまに見る巨大な機械です。自ら高層ビルに登り、ビルの完成後はいつの間にか姿を消す不思議なしくみを中心に、重量物を運搬する力学の原理などを知っていただくことがこの展示品の目的です。
<重い荷を持ち上げるしくみ:滑車>
動滑車や組み合わせ滑車を利用すると、小さい力で荷を持ち上げることができるようになります。クレーンの先端は組み合わせ滑車になっているため、重い荷をスムーズに持ち上げることができます(図1)。
<重い荷を持ち上げるしくみ>
クレーンにもてこの原理に関わるモーメントが考えられています。ビームの後方に一定の重さがあり、荷を吊り上げるビーム前方とバランスをとっています。また、吊り荷の位置とアームの角度を調節し、より小さい力で荷物を持ち上げることができるよう操作します。
<重い荷を持ち上げるしくみ:パスカルの原理>
総重量で3000トンを超す巨大クレーンを動かすにはパスカルの原理が使われています。パスカルの原理とは、「密閉された容器の中の流体(この場合は油)は、その容器の形に関係なく、ある一点に受けた単位面積当たりの力(つまり圧力)で、流体のその他のすべての部分に伝える」というものです。
図2のように、ある力を小さな面積に加えると、同じ圧力が流体のすべての部分に伝わります。大きな面積の部分にも同じ圧力が伝わっています。しかし、力は圧力と面積の積ですから、大きな面積の部分には、小さな面積に加えた力より大きな力が生じます。
自動車の油圧ブレーキ、油圧ジャッキなどにも応用されています。パスカルの原理やその応用品を「油圧」などと略称、俗称されることがあります。
<ビルを登るしくみ>
建設中の高層ビルの最上階ではたらき、ビルが完成するといつの間にか姿を消してしまいます。ビルを自ら登ることができるのです。
(1) 可能な高さまでビルを組み立てます。
(2) 最上部に鉄骨を渡し、油圧式昇降装置でマストを引き上げます。
(3) 引き上げたマストを架台に固定し、マストをつたってクレーンが登っていきます。
(4) これを繰り返すことで、常に、建設中のビルの最上部で作業できるようになっています。
協力
竹中工務店
参考文献
はたらく自動車(1997) 小賀野実(ひかりのくに)
文 学芸員 馬渕浩一