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滑車は、中央に1本の軸をもつ円盤で構成される機構のことです。円盤には周長に沿って溝があることが多く、そこにロープなどを円盤の周囲またはその溝にかけて使います。力の方向を変える機械であるとともに、重量物を小さな力で持ち上げることができるように工夫されたものもあります。
滑車に関する知識を深めていただくことがこの展示品の目的です。
最も簡単な滑車は、定滑車と動滑車です。実際には定滑車と動滑車を組み合わせて使うことが少なくありません。簡単な定滑車、動滑車から、組み合わせ滑車までいくつか実際の使用例とともに解説したいと思います。
<定滑車と動滑車>
定滑車は固定されており、力の向きを変えるために利用されます。井戸の水をくみ上げるとき、ロープを引いて水の入った桶を地上にあげます(図1)。動滑車は、ロープの一端が固定されており、重量物は滑車に固定されています。固定されていない側のロープを引き上げると、重量物を上げることができます。このとき、重量物の重さの半分の力で持ち上げることができるようになります。しかし、半分の力にはなりますが、重量物を持ち上げた長さ(高さ)の2倍の長さ分だけ、ロープを引き上げなければなりません(図2)。
力と移動距離をかけたものを仕事と呼んでいます。動滑車に及ぼした仕事とその結果生じた重量物の仕事は一定に保たれています。これは、エネルギー保存の法則といって、力学の基本原理になっています。
<定滑車と動滑車の組み合わせ>
動滑車を使えば、重量物の重さの半分の力で持ち上げることができるのは非常に便利な事実です。しかし、力を加える方向が上向きであるのはどちらかというと不便です。そこで、動滑車によって力を半分にし、定滑車によって力を加える方向を下向きにするという工夫が施されました(図3)。
<クライミングクレーンの先端>
重量物を持ち上げるクレーンの先端には組み合わせ滑車が使われています。フックのすぐ上の部分の中は、図4のようになっています。定滑車と動滑車を組み合わせて、引き上げる力を10分の1にしています。
<輪軸>
直径の異なる大小2つの滑車を貼り合わせたものを輪軸(りんじく)と呼びます。たとえば、直径の比が1:2の組み合わせだとしますと、定滑車のように使用しても、半分の力で重量物を持ち上げることができます(図5)。図5のように軸の部分を支点、Aを作用点、Bを力点と考えた「てこ」だと考えれば、力点での力の大きさを計算することができます。
参考資料
てこ・滑車・仕事量(1988)仮設実験授業研究会(国土社)
文 学芸員 馬渕浩一