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プレス

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展示作品の狙い

 プレス加工とは、一対となった金型の間に材料をはさみ、強い力をかけることで金型と同一の形に成形する技術をいいます。それ以外にも円形や長方形に抜いて穴をあける作業を行うこともあります。
大量生産に欠かせない最も重要な技術であるプレス加工について理解を深めていただくことがこの展示品の目的です。

知識プラスワン

 プレス加工の説明の前に、金属の塑性、展性の2つの性質を確認しておきましょう。
塑性とは、力を加え変形させたときに、ゴムのように元に戻らず、変形後の形を保つ性質のことを示します。展性は、塑性のひとつの性質で、圧縮する力が加わったときに変形後の形を保つ性質をいいます。
 金型に金属材料をはさみ、大きな圧縮力を加えますと、金型の形にあわせて金属が変形していきます(図1)。変形後、元の形に金属材料が戻ることはありません。塑性、展性という性質がこの技術のおおもとにあることがわかります。
 自動車のボディのなめらかな曲面はプレス加工によってできています。燃料消費を抑えるために、自動車のボディは軽量化が求められています。そのため、きわめて薄い鋼板が使われます。この薄い鋼板をプレスする際、鋼板にできるだけ均一にプレスの圧力がかかるようにせねばなりません。金型にごくわずかな突起やくぼみがあれば、プレスした時、その場所に集中的に圧力がかかってしまい、鋼板が割れてしまいます。金型を作るには最初工作機械の手を借りますが、その後、手作業によって精妙に磨き上げられていきます。
 また、より立体的にプレス加工する場合、数回に分けて少しずつプレスしていくこともあります。例えば、金属製のコップを作る場合、円盤状の金属をもとに、少しずつプレスして最終の形に整えていきます。これを深絞りと呼んでいます(図2)。
 長方形の金属を曲げて円筒を作り端と端を溶接し、さらに円形の金属を溶接して完成させる方法でもコップができないことはありません。しかし、短時間に大量に作ることはできません。これでは高コストとなってしまうのです。そのため、工業的にコップを大量に作るには、プレス技術、すなわち深絞りの技術が選択されるのです。
 東京都墨田区の岡野工業という会社の社長(ご本人は代表社員といっています)岡野雅行さんがこのプレス技術で有名になり、よくテレビにも出演しています。
岡野さんは、最初、携帯電話のリチウムイオン電池のケースをプレスで製造したことで知られるようになりました。
 携帯電話のケースは非常に薄いマッチ箱のような形をしています。リチウムイオン電池のケースは金属を展開図に切り抜いて貼り合わせるという手法はとれません。強い腐食性がありますから、もしつなぎ合わせた部分から液漏れすると大変なことになってしまいます。さらに、薄いステンレスを使っていますので亀裂が入りやすく、プレス加工に高い技術が求められました。
 1枚のステンレス板を少しずつ変形していき、最後に薄いマッチ箱にするためには何回に分けて、それぞれどの程度に曲げ加工し、時には圧縮ではなくしごくような力を加え・・・。どこまで力を加えると金属が破断するか、過去の経験を基に最も合理的な工程を設計していくのです。もちろん最初から思ったとおりに加工できるとは限りません。失敗と成功の試行錯誤の中から技術を積み重ねていくのです。
 最後に、プレスのもう一つの作業である穴あけ加工についてごく簡単に説明しておきます。円形や四角形の工具(刃物)を金属材料にあて、圧力をかけて穴をあける作業を行うことも少なくありません。これは「打ち抜き」と表現される作業です。

 


【 参考資料 】

協力
日本アルミニウム協会
参考資料
絵ときプレス現場の観察ノート(2010)村上智弘(日刊工業新聞社)
文 学芸員 馬渕浩一

 

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