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私たちの豊かな生活はいろいろな電気機器によって支えられています。テレビやパソコン、携帯電話、FAX、冷蔵庫、電子炊飯ジャーなど、これら電気製品なくして今日のわれわれの生活は成り立たないといってもよいでしょう。身の回りにある電子機器の一部を分解し、拡大してその部品のもつ役割を理解していただくことがこの展示品の目的です。
この展示品では、電子炊飯ジャー、液晶テレビ、パソコン、モバイルプリンター、電球型蛍光灯、デジタルカメラ、FAXが取り上げられています。これらの電気製品の心臓部には膨大な情報を処理する集積回路が組み込まれています。ここでは、集積回路を視点として解説することにします。
<電子炊飯ジャー>
パソコンや携帯電話だけではなく、炊飯ジャーにも集積回路が組み込まれています。
炊飯には30分、蒸らし時間を入れると1時間弱程度の時間がかかります。電子炊飯ジャーは、炊き上がりの時刻を設定するとその設定時間から逆算して炊飯開始の時刻を決定し、炊く量に応じて火力すなわち電熱ヒーターへの電流を調整して、誰でもおいしいご飯が炊けるように設計されています。それだけではなく保温もできるように考えられています。
これら多くの情報を処理し、最適な作業を実行するために、炊飯器にはマイコン(マイクロコンピュータ)が取り付けられています。そこには集積回路が組み込まれています。
<電球型蛍光灯>
照明にも集積回路が組み込まれています。省エネルギーを徹底するため、白熱電球から電球型蛍光灯などへの転換が進んでいます。蛍光灯を使うと同じ照度の白熱電球より20%から30%ほどエネルギー消費を抑えることができるからです。電球型蛍光灯とは、白熱電球用のソケットに直接装着して使用できる蛍光灯のことで、球状のカバーの中に細い蛍光灯を曲げて組み込んでいます。
さて、蛍光灯を点灯させるためにはインバータと呼ばれる電子回路が必要です。ここにも集積回路が活躍しています。白熱電球の場合は電源に直接接続してもよかったのですが、蛍光灯はそれができません。直管蛍光灯の場合、器具の方にインバータが取り付けられているのですが、電球型蛍光灯の場合はインバータが中に組み込まれています。
<携帯電話>
携帯電話には数多くの集積回路が組み込まれています。電子炊飯ジャーや電球型蛍光灯での集積回路の作業は比較的単純なものです。携帯電話になると、音声や画像などの膨大な情報を瞬時にしかも高度に処理しなければなりません。同じ集積回路といっても役割の大きさは比較になりません。
ここで集積回路のことをおさらいしておきましょう。集積回路(IC)とは、シリコン半導体の基板の上にトランジスタやダイオード、コンデンサなどの部品を多数とりまとめて作りこんだ回路のことです。さらに集積度が上がったものは、大規模集積回路(LSI)、超大規模集積回路(VLSI)、超々大規模集積回路(ULSI)などと呼ばれるのですが、ここではこれらすべて包括して集積回路として扱うこととします。
集積回路の役割に注目してみると、メモリ、マイコン、システムLSIなどに分類できます。それぞれの詳しい説明は、紙面の限りで触れませんが、重要なものは最後のシステムLSIです。システムLSIとは、CPU(注1)やメモリ、周辺回路、ASIC(注2)など複数のLSIで構成されるシステム自体を1つのチップにまとめた大規模ICのことで、システムに近い機能を持つLSIです。システムLSIは、小型さと低消費電力が要求される携帯電話機、デジタルカメラ、ポータブルオーディオ機器、ゲーム機などのエレクトロニクス機器に搭載されています。
(注1)CPU:中央演算処理装置のこと。コンピュータの心臓部。
(注2)ASIC:電子機器メーカーが携帯電話やゲーム機など自社製品に使用するために自ら設計するICのこと。
携帯電話には、このシステムLSIが2個使われています。ベースバンドプロセッサとアプリケーションプロセッサです。ベースバンドプロセッサは通信と通話に関する作業を行い、アプリケーションプロセッサは動画・画像、音楽、プログラムなどに関する作業を行うものです。携帯電話のおおよそのしくみを図で示すと以下のようになります。
DSP(図中):デジタルシグナルプロセッサのこと。音声や画像のデジタル信号を高速に処理するために特化したマイクロプロセッサ。
協力
パナソニック株式会社
株式会社日立製作所
ブラザー工業株式会社
象印マホービン株式会社
参考資料
最新ケータイを支える技術(2006)西田宗千佳(技術評論社)
文 学芸員 馬渕浩一