科学館を利用する > 展示ガイド > 展示フロアマップ > 縦波と横波
波には横波と縦波の2種類があることを知ってもらいます。展示室の天井に取り付けられた長さ10mの横波と縦波の発生装置の動きを観察してもらうことで、2種類の波の性質の違いを知ってもらいます。
波はその伝わりかたで2種類に分けることができます。それが、横波と縦波です。横波と縦波の違いは、波の揺れる方向の違いです。波の進行方向と垂直なのが横波、進行方向なのが縦波です。
【横波】
横波はイメージしやすい波です。ぴんと張ったロープを揺らしたときに伝わる波が横波です。波は物質が振動することによって生じます。ロープならロープそのものが振動します。その振動する方向が、波の進む方向と直角になるものを横波と呼びます。展示品ではムカデの足のように並んだ水平棒が上下に揺らぐのが伝わっていきます。波が進む方向と棒が揺れる方向は直角なので、これは横波であることを示しています。
【縦波】
縦波はイメージがしにくい波です。展示品は10mのバネで縦波を表わしています。展示品の動きを見ると、バネが押されることでバネの間隔の短い部分が伝わっていくのが分かります。バネの縞模様が移動していくように見えます。この縞模様の移動が波なのですが、一般的な波のイメージと異なるので、『波』ととらえることが難しいかもしれません。縦波は別名『疎密波』といいますが、こちらの名前の方が実態を表わしています。展示品の動きで分かるように、『疎』の部分と『密』な部分が伝わっていくのが縦波の本質です。縦波は、波の進む方向を『縦』ととらえることでそのように呼ばれます。
【音は縦波】
音は空気の振動です。そして、その振動は横波ではなく縦波です。大きな音がしたときに、身の回りのものが震えることから、音が空気の振動であることは理解しやすいと思います。しかし、音が縦波であることを理解するのは簡単ではないかもしれません。
空気は酸素や窒素の分子が自由に飛び回っています。ロープなどの固体ならば揺れは伝わりますが、バラバラでお互いに分子がつながっていない空気では揺れは伝わりません。つまり空気では横波が生じないのです。しかし、揺れではなく、分子の密度の違いならば伝わることができます。
音の発生源は振動するモノです。口の中の声帯だったり、スピーカーのコーン紙だったり、震える金属だったりします。振動するモノが、それに触れている空気を押したり引いたりすることで一瞬の密度差が生まれます。生まれた密度の違いは、それを解消しようとして移動し伝わることになります。それは展示品の縦波で見られるように、濃い所と薄いところが移動し伝わるのと同じです。空気の波はそのように空気の疎密が伝わるもので、それを私たちは縦波と名付けて呼んでいます。
【地震は縦波と横波】
震源で発生した揺れが伝わるのが地震です。地震は地面の揺れが波となって広がっていきます。地震は縦波と横波の両方が発生します。そして、縦波は横波よりも伝わる速度が早いという特徴があります。地震の縦波はP波と呼ばれて、大きな揺れが来る前のカタカタ揺れると表現されることが多い初期微動がそれにあたります。横波はS波と呼ばれ、初期微動の後の大きな揺れがそれにあたります。
岩石や金属といった固体では縦波と横波の両方の波が生じます。
【光と波】
光も波の性質を持っています。そして縦波ではなく、横波です。横波である証拠は、光には偏光という現象が生じるからです。縦波には偏光が存在できません。
波には波長という、波の特徴を表すものがあります。海の波で考えると、波頭と波頭の距離が波長になります。光の場合、波長の違いが色の違いになります。光の中で波長が長いものは赤色で、短いものは青色です。赤より長い波長になると人間の目では見えない、赤外線や電波になりますし、青より短い波長になると、紫外線やエックス線、ガンマ線になります。
著者 文 学芸員 山田吉孝