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レンズによって光が曲げられる現象を観察してもらいます。
レンズは光の屈折を利用して、光を集めたり広げたりします。 レンズ1枚で虫眼鏡になりますが、複数枚を組み合わせることで、望遠鏡や顕微鏡になります。
【光が屈折する理由】
光は空気から水、水からガラスなど、異なる物質へ入るときに進行方向が曲げられます。この現象を屈折といいます。屈折は、それぞれの物質の中で光の速度が違うことによって生じます。光の速度は秒速30万kmと言われますが、これは真空中での話です。水の中では遅くなり秒速22.6万km程です。この速度の違いが、屈折という現象を生み出します。
光は、ある地点から他の地点へ向かう時、最も短時間で行くことができる経路をとります。途中で速度を変えないのならば、2点間を結んだ直線が最も短時間で到達できる経路です。しかし、途中で速度が変化するならば、2点間を結んだ直線が最も短時間で行ける経路とは限りません。速く行ける距離を長くし、遅い速度でしか行けない距離を短くすることでトータルの時間を短くすることができます。そのような道筋を光は選ぶので、光は異なる物質に入るときに屈折して進むのです。
【音も屈折する】
音にも屈折現象があります。夜に、遠くの鉄橋を渡る列車の音が聞こえるのは音の屈折によるものです。夜間には、地表面に冷たい空気が、上空には暖かい空気が層をなすことがあります。これにより温度の違う空気では音速が変化するため、音の進む方向が屈折し、いったん上空にむかった音が地表に戻ってくることがあります。それによって昼間は聞こえない遠くの音が聞こえたりすることがあるのです。
光が屈折する現象は古くから知られていました。紀元前300年頃の数学者ユークリッドは、容器の底に置いた物体が、容器のふちで隠されて見えない時でも、水を注ぐと見えるようになるという実験を書き残しています。屈折の法則を数式で正確に表したのは17世紀オランダのスネルです。スネルの法則は高校の物理で習う重要な法則のひとつです。
屈折の法則を、光の波動説にもとづいて説明したのが、スネルの亡くなった3年後に生まれた、同じオランダの物理学者ホイヘンスです。ホイヘンスの原理と言われる波の伝わり方の考え方も学校で習う重要な原理のひとつです。現在の学校で習うぐらいですから、ホイヘンスの説明による屈折の法則は正しいものであったのですが、当時は別の説もありました。万有引力の発見で有名なニュートンは光は波ではなく粒であるという粒子説の立場をとっており、屈折も光の粒の速度が水中で変化するためであると説明しました。ただし、その速度の変化は、波動説が水中では空気中よりも遅くなるというのに対して、粒子説は速くなるというものでした。今では水中の方が空気中よりも光の速度は遅いことが測定され、ニュートンの考え方が間違っていたことが分かっています。ニュートンの光の粒子説は、様々な光の現象を通して19世紀末までにはほぼ完全に否定されましたが、その後の物理学の発展により、今日では光は波でもあり粒でもあるという説明がされています。
参考資料
視覚でとらえるフォトサイエンス物理図録(2006)数研出版編集部(数研出版)
著者 文 学芸員 山田吉孝