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工業製品の材料は「セラミックス」「金属」「有機材料」の3つに分類できます。有機材料には、プラスチック、ゴム、紙、繊維、油脂、界面活性剤、液晶など、じつにさまざまなものがあります。いずれも、主に炭素、水素、酸素、窒素原子などが共有結合してできています。
ここでは映像解説といろいろな実物試料の展示をしています。
有機材料の代表プラスチックについて解説します。
【1.プラスチックの原料と合成】
プラスチックの大部分は、石油の中のナフサという成分からつくられています。ナフサを熱分解してできた、エチレンやプロピレン、ベンゼンなどの小さな分子(低分子またはモノマー)がその原料となります。この低分子を重合反応により何千、何万個と結合させて大きな分子(高分子またはポリマー)にしたものが、プラスチックや合成ゴムや合成繊維です。プラスチックの名前に多く見られる「ポリ○○○」のポリとは「多い」という意味です。
原料の低分子の種類やその組み合わせ方などにより、さまざまな種類のプラスチックをつくることができます。また、同じ種類のプラスチックであっても、重合方法や添加剤などによって、性質の異なる製品ができます。
家庭にあるプラスチック容器などには、プラスチックの種類(原料樹脂名)が記されています。どんな種類があるか、どんな所に使われているか、一度たしかめてみてください。
【2.熱可塑性樹脂】
バケツなどに使われているポリエチレンは、加熱すると軟らかくなり自由に形を変えることができます。このように力を加えると変形し元にもどらない性質のことを「可塑性」といいます。もともと「プラスチック」という言葉は「可塑性の」という意味です。多くのプラスチックは「熱可塑性樹脂」です。熱可塑性樹脂は、ポリエチレンのように長い線状構造をもった高分子の集まりです。このため、加熱していくと、高分子どうしがすべるように動きだし、熱可塑性樹脂は軟らかく流動状態になります。ただし、それ以上温度を上げても気体にはなりません。その前に高分子は熱分解してしまいます。
代表的なものとしては、ポリエチレン・ポリエステル・ポリ塩化ビニル・ポリスチレンなどがあります。
【3.熱硬化性樹脂】
ところで、加熱してもほとんど軟らかくならないプラスチックもあります。こういう性質をもつプラスチックを「熱硬化性樹脂」といいます。その高分子構造は線状ではなく、網の目のような立体構造をしているという特徴があります。加熱しても分子は動くことができないため、軟らかくなりません。代表的なものとして、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂などがあります。
【4.プラスチックと環境】
プラスチックは軽くて安価な優れた材料で、大量に生産され大量に使われています。しかしプラスチックは生物によって分解されないため、使い終わった後のプラスチックごみが問題となっています。
そこで考えられた方法の一つはリサイクルです。例えば回収したペット(PET)ボトルは細かくくだいてとかされ、ポリエステルの服やカーペット、クリアファイルなどの文房具等に生まれ変わります。PET(polyethylene terephthalate)はプラスチックの種類の名前です。またPETボトルを化学的に分解して原料にもどし、再びPETボトルにする方法もあります。あるいは、ゴミとして埋め立てるのではなく焼却し、燃料の代わりとしてその熱を利用するという方法もリサイクルになります。
一方、微生物に分解されやすい「生分解性プラスチック」を製造するという方法があります。なかでも注目されているのが「ポリ乳酸」です。これの原料は石油ではなく、トウモロコシやイモ類など植物のデンプンです。そしてブドウ糖などにし発酵させて乳酸にします。さらに乳酸どうしを反応させると高分子のプラスチック「ポリ乳酸」になります。植物のデンプンとプラスチックでは、かけ離れたもののように思えるかもしれませんね。けれどもどちらも何千、何万個もの炭素原子を中心に結合した高分子という点では仲間なのです。
ところで、植物が原料であるからといって生分解性とは限りません。また石油を原料にしたプラスチックの中にも生分解性のものもあります。
参考資料
図解でわかるプラスチック(2008) 澤田和弘(ソフトバンククリエイティブ(株))
読んでなっとく化学の疑問(2010) 左巻健男 監修(技術評論社)
PETボトルリサイクル推進協議会 http://www.petbottle-rec.gr.jp/movie.html
文 学芸員 石田 恵子