科学館を利用する > 展示ガイド > キーワード検索 > 「う」ではじまるキーワード > キーワード【宇宙開発】 > 宇宙へ到達する -H-ⅡBロケット-
ロケットには最先端の技術や素材が投入されています。特徴は、軽くて強いことです。打ち上げ後は空気抵抗に耐えながら、秒速約8キロメートルといった高速に達して初めて地球の引力を振り切って宇宙まで到達します。
純国産のロケットH-IIA、H-IIBは、現在、日本の主力ロケットです。H-IIAロケットは人工衛星や探査機を打ち上げています。H-IIBロケットは国際宇宙ステーションに物資を補給するHTV(H-II Transfer Vehicle)を打ち上げる世界でも最大級のロケットです。
この展示では、実際に宇宙まで到達したH-IIBロケットのフェアリング(ロケットの最先端、衛星を保護する部分)一部の実物、M−Vロケットフェアリングの軽さを実感できるカット実物モデル、ロケットの製造から打ち上げまでを解説した映像、製造過程を紹介したグラフィックを用いて、最新技術をつぎこんだロケットを解説します。
【名古屋地域は日本のロケット製造中心地】
日本の主力H-IIAロケット、H-IIBロケットとも、メインとなる第一・第二段のロケットタンク、同じく第一・第二段エンジン部は名古屋および近郊の工場で製造されています。また、フェアリングの設計は岐阜県の会社で行われています。
これらの部品はロケット全体のかなりの部分を占めています。地元製のロケットが宇宙へ飛んでいると言っても良いわけです。
【軽くて強い、素材と構造】
H-IIBロケットは上空120キロメートル付近でフェアリングを切り離します。その後、フェアリングは海に落下します。落ちた時の衝撃でバラバラになりますが、軽いので大部分は沈まず海上を漂流しているところを、海上の安全のために船で回収します。展示のフェアリングは、ほとんど真空状態である宇宙まで実際に行って帰ってきた実物です。
フェアリングは薄い板状ですが、表面・裏面のパネルも内部構造も主にアルミ材を使っています。特にパネルの内部は蜂の巣状の構造(ハニカム構造)になっていて強度を保ちながら軽くなっています。形状を保つための構造物が外部に装着されていますが、その部分はロケット上昇時に空気抵抗を受けて高温になります。そのため、特殊な断熱材を用いて高温に耐えています。このように様々な工夫を重ねたフェアリングですが、ほとんど手作業で組み立てられ、最先端の技術と熟練工の技が使われています。
【M-Vロケットフェアリングはカーボンを使用】
M-Vロケットは中型のロケットで、小惑星探査機の「はやぶさ」の打ち上げも行いました。フェアリングは、発射のときや飛んでいるときの空気の流れによる力や熱、そして音から探査機を守る役目をします。M-Vのフェアリングも、内部はアルミを蜂の巣状に形作ったハニカム状の板を使っていますが、表裏のパネルはCFRP(炭素繊維)製の薄い2枚の板を使って作られています。フェアリング全体で、長さ約9メートル、直径2.5メートルの大きさですが、重さは約700キログラムしかありません。展示品は下部から持ち上げることができるのでフェアリングの軽さを実感できます。
■ 参考資料
JAXA「H-IIBロケット」パンフレット
http://www.jaxa.jp/projects/rockets/h2b/index_j.html
■協力
川崎重工業株式会社 Kawasaki Heavy Industries, Ltd.
JAXA(宇宙航空研究開発機構)Japan Aerospace Exploration Agency
■著者(日本語)学芸員 鈴木雅夫