科学館を利用する > 展示ガイド > キーワード検索 > 「い」ではじまるキーワード > キーワード【隕石】 > 地圏−地球の材料
地球内部はどのような物質なのでしょうか。地球はどのような「材料」からできたのでしょうか。そのヒントを与えてくれるのが隕石(いんせき)です。実物の隕石を見ながら地球誕生の壮大なドラマに思いをはせていただきたいと思います。
【地球の材料】
地下物質は、重たいものが下に、軽いものが上に分かれて(分化して)います。では、分化する前の「地球の材料」はどんな物質だったのでしょうか。そして、それがどのようにして分化したのでしょうか。それを知る手がかりは宇宙から降ってくる「隕石」にあります。
【コンドライト】
隕石の約86%は、コンドルールと呼ばれる丸い粒を含む「コンドライト」です。コンドルールは岩石や金属の液滴が固まったもので、重たいものと軽いものが混ざっていることから、高温の無重力環境でできたと考えられます。コンドライトの化学組成は、太陽と似ており(水素やヘリウム等の揮発性の元素を除いて)、形成年代は地球の最古の岩石より古い45億5000万年前がほとんどです。これらのことから、コンドライトは、太陽系ができたころの状態を記録した「地球の材料」と考えられています。
展示されているものは、1969年メキシコに落下した炭素質コンドライト「アエンデ隕石」です。
【鉄隕石(隕鉄)】
鉄隕石は鉄とニッケルの合金(nickel-iron)です。鉄が90%以上を占め、ニッケルが数%、少量のコバルトなどを含んでいます。
鉄隕石の切断面を酸で処理すると、金属結晶がからみあってできた幾何学的な模様が見えます。これを「ウィッドマン・シュッテッテン構造」といいます。金属結晶がこれほど大きくなるためには、100万年間で数℃というとてもゆっくり冷える必要があります。このため、十分な重力を持つ大きな天体で、重たいものが下に、軽いものが上に分かれた後、その天体が砕けて、核にあたる合金が飛んできたものと考えられています。
展示されている隕石は1836年にナミビアで発見されたギベオン隕石です。回収された隕石の総重量は10トンを越えると言われます。
【石鉄隕石】
石鉄隕石は、鉄隕石と珪酸塩鉱物が混ざったような隕石です。鉱物としてカンラン石を含むものは「パラサイト」と呼ばれます。重たいものが下に、軽いものが上に分かれた(分化した)石鉄隕石は、隕鉄が作られた原始小惑星の核とマントルの境目か、完全に分離できるほどの引力がなかった小惑星の中心部でないかと考えられています。
展示されているものは、1822年にチリのアタカマ砂漠で発見された「イミラック隕石」です。
【隕石から地球内部を推測する】
ほとんどの隕石は、小惑星帯から飛んできたと考えられています。小惑星帯には、太陽系ができたころの状態を残したまま惑星になりきれなかった小惑星が漂っています。小惑星イトカワをつくっているのもコンドライトだと考えれています。これら小惑星どうしが、衝突したりニアミスしたりして軌道が変わると、砕けて地球に落ちてくることがあるのです。コンドライト(分化していない隕石)は太陽系の原始物質であり、それ以外の隕石はコンドライトが一度融けて重たいものと軽いものに分化したものと考えられます。地球の物質は分化して層構造をつくっていますので、分化した隕石と同じようにしてできたのでしょう。隕石は、地球内部がどのような物質なのかを知る手がかりなのです。
参考資料
藤井旭(2010) 隕石の見かた・調べかたがわかる本 誠文堂新光社
平 朝彦・徐 垣・末廣 潔・木下 肇 (2005) 地球の内部で何が起こっているのか? 光文社
文 学芸員 西本昌司